研究概要 |
法医診断に有用な低体温症マーカーの検出を目的として、マウス低体温症モデルを導入し、心臓のトランスクリプトーム解析をDNA microarray法を用いて行った。 有意差を持って発現変動していた遺伝子は3438個であり、1704個は有意に発現が上昇しており、1734個は有意に発現が減少していた。具体的には最も発現が上昇していた遺伝子はGranzyme Aで、最も発現が減少していた遺伝子はSolute carrier family 41, member 3であった。さらに遺伝子セット解析を行ったところ、有意に上昇している遺伝子セットが57個、有意に減少している遺伝子セットが22個、確認された。Gene functional category analysisにおいては、発現上昇遺伝子、発現減少遺伝子とも最も発現していたカテゴリーはbiological processにおいてはcellular process、molecular functionにおいてはbinding、cellular componentにおいてはcell、cell partであった。 本検討により低体温症における心臓の遺伝子変動が示され、心臓における遺伝子発現は低体温症診断に有用なマーカーとなりうると考えられた。また最も発現が上昇していたGranzyme Aは細胞死に関連するとされており、低体温症における心機能低下に細胞死が関与している可能性が示唆された。また実際の法医診断においてはタンパクが重要な役割を果たすと考えられるが、これらデータはヒト組織を用いた免疫組織学的検討への応用が可能であると考えられた。
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