研究概要 |
本研究では,ホルマリンで固定した臓器を,磁気共鳴画像(MRI)用造影剤等に浸漬した後に,MRI装置で撮像する「MR組織学」の技術を,法医実務の診断上の有効性と応用性を検証すると共に,法医解剖での神経組織所見の把握の緻密化と,診断精度の向上を図ることを目的とする。平成25年度の研究では,法医解剖で摘出したヒト全脳を,ホルマリン・プロハンス混合固定液に浸漬固定して,3テスラの臨床用MR装置で撮像した。撮像シーケンスとして 1 T1W VISTA (TE/TR=12.7/500ms,Average=1,Matrix=256*256,pixel size=1.0*1.0mm) 2 T2W VISTA (TE/TR=124.8/4000ms,Average=1,Matrix=256*256,pixel size=1.0*1.0mm) 3 MP-RAGE (TE/TR=3.46/7.8ms,Average=1,Matrix=480*480,pixel size=0.5*0.5mm) の条件で撮像した。 本実験の結果,T1W VISTAならびMP-RAGEのシーケンスにて撮像することで,高コントラストの画像が得られると共に,0.5㎜の3次元等方性高分解能画像を25分程度の撮像時間で達成可能となった。本実験での撮像プロトコールは,検体処理が極めて容易であり,撮像時間も比較的短時間にとどまりつつ,0.5㎜というルーペレベルでの高分解能画像の取得が可能であった。本実験の手法により,形態計測学的手法を用いた神経疾患の診断,適切な切り出しの支援のための事前検討,脱髄疾患の病勢把握が可能となり,法医実務への応用性は極めて高いと考えられた。
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