平成26年度には、1998年の大迫研究参加者のうち60歳以上の参加者2614名について検討した。7年後の手段的ADL(老研式活動能力指標)の低下への関連の強さを、MRI脳所見のうちラクナ梗塞、大脳白質病変、その他の無症候性脳血管病変について検討したところ、ラクナ梗塞が最も強い関連があることが示された。 平成27年度には、無症候性脳所見に前述の3つの所見に「脳萎縮」を加えて検討する計画を立て、取り組んだ。また前年度の検討では、手段的ADLの総得点変化への影響のみに関する検討であった。手段的ADLは複数の要因により構成されている高次元の機能である。容易に変化する指標であるため、総得点の変化の検討だけでは不十分である。手段的ADLの変化の原因となりえる要因の中で、環境要因を除く身体機能・認知機能・精神状態など自分自身に起因するものは、「Geriatric condition(加齢状態)」「Geriatric syndrome(加齢症状)」としてまとめられる。これらのアウトカムの状態と無症候性脳所見との関連について、先行研究の網羅的検索を行った。キーワードの組み合わせで抽出されたのはMEDLINE 300件、医学中央雑誌430件、コクランデータベース790件が抽出され、これらの中から、無症候性脳所見とIADLとの関連性をより明確化することにつながると考えられる論文を抽出して検討を行っている。これらの先行研究データと対比させる形でコホートデータの解析をまとめ、比較検討する予定である。
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