本研究は摂食障害治療におけるドロップアウトの低減を図るための治療システムを提案することを目的としている.本年度は,平成24年度に施行したカルテ調査,アンケート調査,インタビュー調査の解析結果をもとに,学会発表ならびに論文執筆を行った. 【方法】2009年1月~2012年7月に東京大学医学部附属病院心療内科の摂食障害初診外来を受診した342名のうち,治療をドロップアウトした患者53名(15.5%)に対してアンケート調査(選択回答式+自由記述式)を郵送で行った.自由記述欄のコメントの解析は戈木のGrounded Theory Approach(GTA)の手法を踏襲して解析した. 【結果】回収率は46.3%で,回答者は24名(女性23名,男性1名)であった.年齢は16歳~50歳(中央値25歳),病型分類は神経性無食欲症14名,神経性過食症5名,特定不能の摂食障害5名であった.治療中断の要因に関する回答(選択回答式)では,「主治医との相性(12名)」が最も多く,他には「通院しても変わらなかった(6名)」,「期待していた治療法ではなかった(6名)」,「忙しくなった(5名)」,「症状が良くなった(5名)」が主な項目として挙げられた.自由記述欄のコメントでは,「治療者の人柄や言動」「治療内容」「通院にかかる負担」「診察枠」に関する記述が多く見られた. 【結論】摂食障害治療のドロップアウトには,患者側の要因以外にも医療者側の要因や治療環境の要因が大きく関与していると考えられた.当事者への調査は,ドロップアウトを低減させるためにも有用だと考えられた.
|