研究概要 |
本研究の目的は、皮膚アンチエイジング剤としての漢方薬の作用を、皮膚角層にターゲットを絞り明らかにすることである。具体的には、古来より皮膚の抗老化作用を持つとされている当帰飲子と言う漢方薬を、老齢マウス(40週齢、ヘアレスマウス、雄)に与え、皮膚角層水分量や経表皮水分蒸散量などの皮膚機能パラメータ、コルネオサイトメトリー法による角層細胞の形態、角層酸化ストレス度、表皮細胞における成長因子発現について、その変化を調べた。前年度において、当帰飲子は、老化に伴う、皮膚角層水分量の減少や角層細胞面積および角層多重剥離度の増加を抑制し、それは、老化に伴う表皮ターンオーバーの低下の抑制効果に起因する可能性があることを明らかとした。最終年度では、さらに、当帰飲子の作用機序解明を探るため、角層酸化ストレス度および表皮成長因子、表皮分化マーカーの遺伝子発現変化につき検討を行った。結果:1)角層酸化ストレス;0,2,10%濃度の当帰飲子含有餌にて、4週間(36-40週まで)飼育後、テープストリッピングにて得た皮膚角層のカタラーゼ活性、カルボニル蛋白の定量を行った。しかしながら、各群で、角層酸化ストレス度に明らかな有意差を認めなかった。2)表皮成長因子および表皮分化マーカーのmRNA遺伝子発現;1)と同様の方法で飼育したマウス表皮において、10%当帰飲子投与マウスでは、表皮成長因子の一つであるepiregulinおよび皮膚バリア機能維持に関連するfilaggrinのmRNA発現が増加した。以上の結果より、当帰飲子は老齢マウス皮膚において、表皮成長因子産生亢進により、表皮基底細胞増殖を促し、表皮ターンオーバー低下を回復させることで、皮膚アンチエイジング効果を発揮する可能性があることが明らかになった。
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