研究課題/領域番号 |
24790662
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 悠太 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00580672)
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キーワード | うつ様行動 / 強制水泳試験 / 遺伝子発現解析 / 成長ホルモン / 小脳 / 前頭前野 |
研究概要 |
○うつ様行動の病態メカニズムの解明は重要なテーマであり、動物モデルを用いた検討は多々行われてきたが、一致した見解は未だ得られていない。動物の個体差により、うつ様行動が起きうることが示唆されており、強制水泳試験により、うつ様行動を測定する場合には個体差の影響を抑制するために使用する動物の数を増やすことが一般的な方法である。しかし、網羅的な遺伝子発現解析においては、この個体差の影響を抑制する方法が見出せておらず、うつ様行動の病態を形成するコア遺伝子は未だ明らかにされていない。○本研究では、正常成熟雄ラットに強制水泳試験を行いうつ様行動の指標となる不動時間の分布を解析した。また、この行動解析の結果をもとに、動物をグループ分けし、平均よりもうつ様行動を長く示した動物ではどのような遺伝子が発現変化するか、前頭前野と小脳に着目し解析を行った。 【強制水泳試験】Wistar系雄ラット(10-11週齢)を106匹用いて強制水泳試験を行った。不動時間は28.2 ± 6.8 %(平均 ± S.D.)で、95%信頼区間(許容誤差10%)は[14.9%-41.5%]であった。この不動時間の分布に偏りがないことを確認するため、正規分布適合試験としてカイ二乗試験及びJaque-Bera試験を行い、この分布が正規分布に近似することが明らかとなった。 【うつ様行動示すラット前頭前野および小脳における遺伝子発現解析】上記で行った強制水泳試験の結果をもとに、不動時間が平均値より1 S.D.から2 S.D.延長したラットをうつ様行動ラット群として、コントロールラット群(平均値 ± 1 S.D.)に比べ発現の変化した遺伝子を網羅的に解析し、さらにパスウェイ解析を行った。前頭前野および小脳において成長ホルモン遺伝子(Gh1)をコア遺伝子としたネットワークが見つかり、Gh1の発現減少が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的では、うつ様行動のモデルラットを作製し、うつ様行動に関係するニューロステロイド合成に関与するタンパク質を解析する予定であったが、基準値を設定するためのラットを用いた検討で、うつ様行動を示すラット前頭前野および小脳にて網羅的遺伝子発現解析およびパスウェイ解析を行ったところ、成長ホルモン遺伝子(Gh1)遺伝子が発現変化した遺伝子の中で特にコアな遺伝子で発現減少することを見出した。更にリアルタイムPCRでこの発現減少を確認できた。 うつ様行動を制御するニューロステロイド合成酵素は見出すことはできなかったが、ニューロペプチドを見出すことに成功したため、今年度はこの成果を国際学会および学際的な雑誌に投稿を予定している。 また、今回設定した基準値を基に、うつ様行動を示すモデルラットを作製する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
うつ様行動に関与するニューロペプチドとしてGh1遺伝子を見出したことは非常に重要であり、Gh1遺伝子がうつ様行動にどのように関与するか検討すことは重大な課題になると考えられる。今後はうつ様行動を示す様々なモデルでGh1の発現に影響があるかを検討し、Gh1の発現がうつ様行動を引き起こすメカニズムに必須であるかどうか確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル動物の作製および解析を行う予定だったが、自家繁殖で増やしたラットがメスに偏ってしまい、予定していた数量を用意できず、予定していた実験を行うことができなかったことによるものである。 現在、モデル動物を順次作製しており、前年度できなかった分を行う予定である。
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