研究課題/領域番号 |
24790662
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山本 悠太 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00580672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつ様行動 / 強制水泳試験 / 遺伝子発現解析 / 成長ホルモン / 小脳 / 前頭前野 |
研究実績の概要 |
【目的】うつ病の病態はモノアミン仮説やBDNF仮説で説明されているが、説明しきれない部分があり更なる仮説の提起が期待されている。動物を用いたうつ研究では強制水泳試験を行い動物のうつ様行動を測定することが一般的であるが、個体差による影響が大きく抗うつ薬を用いた薬理実験においても個体差の影響を小さくするために多くの動物が必要である。このため、マイクロアレイを用いた網羅的解析から、真にうつに関係する遺伝子のみを探索するのは困難である。 【結果】本研究では106匹の正常雄ラットを用意しうつ様行動を強制水泳試験により測定した。うつ様行動が平均±1SDを示したラットをコントロールラット、平均+2SDを示したラットをうつ様行動ラットとしこの2群で遺伝子発現解析を行ったところ小脳と前頭前野にて100種類以上の遺伝子の発現が変化していることを見出した。この発現変化した遺伝子群からうつ様行動に関係する可能性がある遺伝子ネットワークをパスウェイ解析にて探索したところ、小脳と前頭前野の両方で成長ホルモン遺伝子を中心とした遺伝子群の発現変化を見出した。 【結論】うつ病およびうつ様行動は情動を司る扁桃体と前頭前野にて制御されていることが報告されていたが、本研究で個体差を新たな手法にて小さくすることにより初めて小脳もうつ様行動を制御している可能性を示唆する結果を見出すことに成功した。小脳は扁桃体や前頭前野に比べて強い遺伝子発現変化を示さないため今まで明らかにできなかったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的ではうつ様行動に関係するニューロステロイド系の同定であったが、結果としてニューロペプチドの成長ホルモンをうつ様行動に関係する分子として同定した。この成果は平成26年度に国際学会(ロシア)で発表し、アメリカ生理学会誌のPhysiological Genomicsに投稿し受理された。また、平成27年度にはこの成果が評価され国際学会(スロバキア)の招待講演で発表することになっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で初めて小脳の成長ホルモン遺伝子の発現低下を見出したため、今後は小脳のどの細胞でこの発現減少を示しているか組織学的に同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果を雑誌に投稿した際に、追加実験が必要になり予定より少し遅れて受理されることになった。カラーページがあるため掲載に必要な費用を支払わなければならないが雑誌の掲載時期が決定しておらず、費用の請求が行われていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に論文投稿に係る費用に用いる予定である。
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