本研究では、骨粗鬆症や再生不良性貧血患者から調製したBM-DFATにおける骨芽細胞や造血ニッチ細胞としての機能を解析する。骨粗鬆症に伴う大腿骨頚部骨折に対する人工関節置換術を行なう患者の骨髄液の一部よりBM-DFATとBM-MSCを調製した。骨分化誘導培地で3週間培養し、骨関連遺伝子のmRNA発現を定量化した結果、BM-MSCとBM-DFATにおいて骨関連遺伝子が同程度発現しており、骨分化誘導とともに発現量が増加した。骨細胞分化の指標であるALP活性は、BM-MSCとBM-DFATでは骨分化誘導前から高く、骨分化誘導とともに活性が高まり、誘導2週間後においてアリザリンレッドS染色陽性のカルシウム沈着を認めた。マウス骨折モデルにBM-DFATならびにBM-MSCをペプチドハイドロゲルと混合し骨折部に移植し、MicroCTによる骨構造解析を行った結果、ペプチドハイドロゲルのみを移植したcontrol群の骨密度と比較して、BM-DFAT群ならびにBM-MSC群で有意に高い値を示した。 再生不良性貧血患者の骨髄検査時に採取される骨髄液の一部よりBM-DFATとBM-MSCを調製した。造血幹細胞維持因子やホーミング関連因子のmRNA量ならびに培養上清中のSDF-1蛋白濃度を定量化した結果、BM-MSCと比較してBM-DFATにおいてSDF-1のmRNA量ならびに蛋白濃度が有意に高かった。ヒト臍帯血生着不全モデルマウスにBM-DFATとヒト臍帯血CD34+細胞を同時移植し、移植後の末梢血中のヒト血液細胞(hCD45+)ならびに骨髄細胞中のヒト血液細胞の各分画をFACSにて解析した結果、移植12週後の末梢血ならびに骨髄において、ヒトCD45+細胞を検出するとともに、骨髄中に造血幹細胞分画を含むヒト血液細胞分画を検出し、ヒト臍帯血とDFATの同時移植によるヒト臍帯血の生着作用を明らかにした。
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