我が国では、2万人を超える人の命が自殺により失われている。自殺死亡者の約半数がうつ状態であるという報告もあるが、うつ状態の患者が受診するのは身体科がほとんどであり、精神科を受診するのはごく僅かである。ところが、身体科の医師の半数以上はうつ状態の患者の診察に苦手意識を有している。また、内科ではうつ病が見落とされることが多いことも指摘されている。そこで、内科診療所におけるうつ病診察ガイドラインを作成するため、内科診療所受診者のうち、初診患者を対象とした観察研究を行った。対象者の年齢は35歳以上65歳未満とした。初診日に対象者の登録を行い、登録から半年後に追跡調査を行った。登録時には、性、年齢、身長、体重、教育歴、婚姻状況、生活習慣、睡眠状況、職業、既往歴、入院歴、治療中の病気、精神科受診歴などについての情報を得た。うつ症状については、SDS(Self-rating Depression Scale)およびPOMS(Profile of Mood States)により評価した。そして内科医師用調査票を使用し、登録時の内科的診断、臨床所見についての情報を得た。これらの情報をもとに詳細な解析を行った結果、睡眠障害とうつ状態の有意な関連を認めた。また、睡眠障害を有する患者の多くは、睡眠の問題を医師に相談していなかった。そのため、睡眠についての問診はうつ状態の早期診断に役立つ可能性がある。担当医は睡眠障害に注意を払うとともに、睡眠について積極的に問診する必要があると考えられる。
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