• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

膵がん腫瘍浸潤による疼痛と悪液質に関わる脊髄アストロサイト活性化の分子機序

研究課題

研究課題/領域番号 24790669
研究機関独立行政法人国立がん研究センター

研究代表者

光永 修一  独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (20466197)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード膵がん / 悪液質 / 神経浸潤 / RAGE / S100P / S100A9 / マウスモデル
研究概要

膵がん神経浸潤により脊髄アストロサイトが活性化して疼痛や悪液質が発症する分子機序に、RAGE(receptor of adavanced glycation endoproducts)とそのligandによる炎症が関わるとの仮説の立証のため、本研究は立案された。具体的には、臨床検体を用いて有望なRAGE ligandを探索し、候補分子の機能および病態への関連について膵がんマウス神経浸潤モデルなどを用いた基礎実験にて確認することを予定した。
58名の膵がん患者より腫瘍部および非癌部の生検を行ってmRNA発現を検討したところ、膵がん組織特異的に発現上昇するRAGE ligandはS100Pであり、非癌組織と比較して平均170倍の発現上昇を認めた。さらに、全身性炎症の指標である血中C反応性蛋白濃度(CRP)を用いて、患者をCRP高値(2.0mg/dL以上)とCRP低値の2群に分けて、炎症例の腫瘍組織で特徴的なmRNA発現上昇するRAGE ligandを検討したところ、S100A9であることがわかった(平均 2.29倍)。剖検例を用いた免疫染色で蛋白発現を検討したところ、S100Pは原発巣、神経浸潤部、転移部位を問わず膵がん細胞にび慢性に強く発現し、S100A9は腫瘍周囲の間質細胞に強く発現していた。S100A9を高発現している細胞は、CD204と共発現しており、腫瘍関連マクロファージであると判断した。
S100PおよびS100A9の血中濃度の測定をELISA法にて行い、神経浸潤との関連を検討している。
膵がん神経浸潤モデルにおいては、疼痛や悪液質を引き起こすCapan-1細胞に、S100PおよびS100A9の明白なmRNA発現を認めた。現在、当該vivoモデルにおけるS100PおよびS100A9の発現と機能を評価中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

RAGE-ligand axisにおいて、注目するligandの選定および蛋白発現の分布の確認は行えたが、RAGEの発現確認に難渋している。原因として、抗ヒトおよび抗マウスRAGE抗体の染色性が不良であることが主要な原因と考えている。
また、ligandの選定法として、文書にて研究に同意を得た膵がん患者の検体を用いて手法を採用しており、患者登録の進捗に時間がかかっているため、全体として研究の進捗に遅れがでている。
本研究では、癌細胞とアストロサイトもしくはシュワン細胞の相互作用について検討するとしているが、実験に必要な細胞培養機器の購入が、遅延した事務手続きのため遅れているため、現在のところ断念している。よって、vivoモデルでの確認を優先する方針に切り替えた。
上記の状況のため、全体として研究の進捗が遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

RAGE蛋白発現については、ウエスタンブロット法での確認で代用することも考慮しつつ、引き続き免疫染色法の改善に努める。改善する方法としては、違う一次抗体の使用、検体の固定法、発色を強化する試薬の使用を試す。
臨床検体の収集については、現在は60名の患者から検体を収集したことから解析に充分な検体数を確保したと考えている。従って、平成25年度において、患者登録の状況は研究の進捗に影響を与えないと考える。
In vitro 実験に必要な細胞培養機器については、平成25年6月に納品が予定されている。しかしながら、当初予定していた神経浸潤vitroモデルは平成25年度中に確立することは困難と考えられる。したがって、in vitroの実験はS100PおよびS100A9の作用を細胞別に(癌細胞・シュワン細胞・アストロサイト)検討するのみとする。
In vivoは順調に進捗しており、特に推進について考慮する必要はないと考える。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Associations of interleukin-6 with vegetative but not affective depressive symptoms in terminally ill cancer patients.2013

    • 著者名/発表者名
      Inagaki M, Akechi T, Okuyama T, Sugawara Y, Kinoshita H, Shima Y, Terao K, Mitsunaga S, Ochiai A, Uchitomi Y.
    • 雑誌名

      Support Care Cancer.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Remarkable tumor lysis in a hepatocellular carcinoma patient immediately following glypican-3-derived peptide vaccination: An autopsy case.2013

    • 著者名/発表者名
      Sawada Y, Yoshikawa T, Fujii S, Mitsunaga S, Nobuoka D, Mizuno S, Takahashi M, Yamauchi C, Endo I, Nakatsura T.
    • 雑誌名

      Hum Vaccin Immunother.

      巻: 9(7) ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phase I/II study of gemcitabine as a fixed dose rate infusion and S-1 combination therapy (FGS) in gemcitabine-refractory pancreatic cancer patients.2012

    • 著者名/発表者名
      Morizane C, Okusaka T, Ueno H, Kondo S, Ikeda M, Furuse J, Shinichi O, Nakachi K, Mitsunaga S, Kojima Y, Suzuki E, Ueno M, Yamaguchi T.
    • 雑誌名

      Cancer Chemother Pharmacol.

      巻: 69(4) ページ: 957-64

    • DOI

      10.1007/s00280-011-1786-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neural invasion induces cachexia via astrocytic activation of neural route in pancreatic cancer.2012

    • 著者名/発表者名
      Imoto A, Mitsunaga S, Inagaki M, Aoyagi K, Sasaki H, Ikeda M, Nakachi K, Higuchi K, Ochiai A.
    • 雑誌名

      Int J Cancer

      巻: 131(12) ページ: 2795-807

    • DOI

      10.1002/ijc.27594

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Impact of tumor-associated macrophages on invasive ductal carcinoma of the pancreas head.2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa K, Mitsunaga S, Kinoshita T, Konishi M, Takahashi S, Gotohda N, Kato Y, Aizawa M, Ochiai A.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 103(11) ページ: 2012-20

    • DOI

      10.1111/j.1349-7006.2012.02411

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Treatment outcome for systemic chemotherapy for recurrent pancreatic cancer after postoperative adjuvant chemotherapy.2012

    • 著者名/発表者名
      Taniyama TK, Morizane C, Nakachi K, Nara S, Ueno H, Kondo S, Kosuge T, Shimada K, Esaki M, Ikeda M, Mitsunaga S, Kinoshita T, Konishi M, Takahashi S, Okusaka T.
    • 雑誌名

      Pancreatology

      巻: 12(5) ページ: 428-33

    • DOI

      10.1016/j.pan.2012.07.016.

    • 査読あり
  • [学会発表] Phase I/II study of lenvatinib (E7080), a multitargeted tyrosine kinase inhibitor, in patients (pts) with advanced hepatocellular carcinoma (HCC): Phase I results.2013

    • 著者名/発表者名
      Shuichi Mitsunaga, Masafumi Ikeda, Hideki Ueno, Kohei Nakachi, Chigusa Morizane, Shunsuke Kondo, Satoshi Shimizu, Yasushi Kojima, Takuya Suzuki, Toshiyuki Tamai,et al.
    • 学会等名
      ASCO-GI2013 Gastrointestinal Cancers Symposium
    • 発表場所
      San Francisco, America
    • 年月日
      20130124-20130126
  • [学会発表] 進行膵がんにおける腹腔動脈および上腸間膜動脈周囲浸潤の臨床的意義.2012

    • 著者名/発表者名
      光永修一、池田公史、大野泉、清水怜、高橋秀明、奥山浩之、桑原明子、奥坂拓志、上野秀樹、森実千種、近藤俊輔、落合淳志.
    • 学会等名
      第10回日本臨床腫瘍学会学術集会.
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20120728-20120728
  • [学会発表] 膵がん化学療法において治療前デスアシルグレリン値は消化器症状の予測因子である.2012

    • 著者名/発表者名
      三浦智史、光永修一、松元信弘、中里雅光、大野泉、清水怜、高橋秀明、奥山浩之、桑原明子、池田公史.
    • 学会等名
      第10回日本臨床腫瘍学会学術集会.
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20120728-20120728
  • [学会発表] 膵癌化学療法において腫瘍制御予測因子となりうる症状変動の検討.2012

    • 著者名/発表者名
      桑原明子、光永修一、池田公史、大野泉、清水怜、高橋秀明、奥山浩之、奥坂拓志、上野秀樹、森実千種、近藤俊輔.
    • 学会等名
      第10回日本臨床腫瘍学会学術集会.
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20120728-20120728
  • [学会発表] 進行膵がん患者に対する2次化学療法としてのS-1療法の早期中止に関わる因子解析.2012

    • 著者名/発表者名
      田中弘人、光永修一、小林美沙樹、船崎秀樹、市田泰彦、高橋秀明、大野泉、清水怜、池田公史、和泉啓司郎.
    • 学会等名
      第10回日本臨床腫瘍学会学術集会.
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      20120727-20120727
  • [学会発表] 肝転移を有する膵腺房細胞癌に対しゲムシタビン塩酸塩とS-1併用療法を行った2例.2012

    • 著者名/発表者名
      桑原明子、光永修一、清水怜、大野泉、高橋秀明、奥山浩之、池田公史.
    • 学会等名
      第320回 日本消化器病学会 関東支部例会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120707-20120707

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi