研究概要 |
マウスDSS誘発大腸炎を用いて、シクロスポリン投与により腸管粘膜局所でのTGF-βシグナルの発現を高めることにより腸上皮細胞アポトーシスを介した粘膜障害の抑制効果を報告し(Am J Physiol,2009;297)、さらに詳細機序の解析を進めている。 実験腸炎モデルを用いたin vivoでの解析では、シクロスポリンによる腸管局所のTGF-βシグナルの発現増強と腸上皮アポトーシス抑制効果は、T, B細胞が欠損したSCIDマウスにおいては認めない。一方、CD4+CD25+制御性T細胞を移入したSCIDマウスでは、シクロスポリンによる腸管局所のTGF-βシグナルの発現増強と腸上皮アポトーシス抑制効果を認め、さらにその効果はTGF-βの中和抗体で消失した。 次にin vitroの解析で、マウス脾臓よりautoMACSにより分離したCD4+CD25+制御性T細胞をシクロスポリン刺激下で培養、TGF-βシグナルについてmRNAの発現解析をreal time PCRで行ったが、発現増強は認めなかった。従ってシクロスポリンによるTGF-βシグナルの発現増強を介した粘膜障害抑制効果は、CD4+CD25+制御性T細胞の存在が不可欠であるが、直接の発現増強効果ではないことが示唆された。 介在する要素として、マクロファージへの効果、あるいは他のサイトカイン(IL-22, IL-18, IL-12, IL-23など)が考えられ、腸管局所のRNAのマイクロアレイによる発現解析の結果、IL-22の関与が示唆された。
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