研究課題/領域番号 |
24790687
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
島上 哲朗 金沢大学, 大学病院, 助教 (50436820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | C型慢性肝炎 |
研究概要 |
初年度は、microRNA-122(以下miR-122)に対するアンチセンス鎖(以下anti-miR-122)を合成し、その抗C型肝炎ウイルス(以下HCV)効果の有無を、HCV培養細胞系において検討した。anti-miR-122としてLNA修飾、およびRNAの2'位をメチル化し安定化したものを用いたが、既報のごとく良好な抗ウイルス効果を確認した。また既に入手済みであったNS5A阻害剤、NS3/4A阻害剤の抗ウイルス効果も確認した。 次に同じくHCV培養細胞系を用いて、anti-miR-122とNS3/4A阻害剤、NS5A阻害剤、およびIFNαとの相加・相乗的な抗ウイルス効果の有無に関して検討を行った。その結果、anti-miR-122の併用によりいずれも相加的な抗ウイルス効果を認めたが、相乗的な効果は認めなかった。 次にHCVが慢性的に感染している培養細胞を①anti-miR-122単独、②NS5A阻害剤単独、③anti-miR-122とNS5A阻害剤併用の3種類の抗ウイルス療法下で、4週間処理を行い、経時的にHCVの複製をモニタリングした。その結果、anti-miR-122単独療法下では、持続的な低い複製を認め、NS5A阻害剤単独療法下では、HCV複製は一旦低下後上昇傾向を示した。さらに両治療の併用下では、HCV複製の持続的な低下を認めた。この結果から、anti-miR-122単独では、ウイルス排除に十分な抗ウイルス効果を得られないこと、NS5A阻害剤単独では、耐性ウイルスの出現が危惧されること、また両方の治療を併用することでNS5A阻害剤の耐性ウイルスの出現を予防し、anti-miR-122単独療法に比べより強力な抗ウイルス効果を得られる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より、初年度は、anti-miR-122療法、および入手していたNS5A阻害剤、NS3/4A阻害剤の抗ウイルス効果を確認し、さらにこれらの治療法の併用による相加・相乗的な抗ウイルス効果の有無を明らかにすることを予定していた。実際、研究実績の概要に記載したように、これらの点を明らかにしえた点で、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の結果からは、anti-miR-122療法の併用によりNS5A阻害剤耐性ウイルスの出現を抑制できる可能性が示唆された。今後は、NS3/4A阻害剤との併用においても同様にNS3/4A阻害剤耐性ウイルスの出現を抑制可能かどうか検討する。 さらにanti-miR-122の抗HCV効果の作用機序の解明を行う。特にanti-miR-122療法による内因性インターフェロン誘導回復の有無を検証する。 miR-122結合欠損変異体と野生型HCV genomeによる内因性インターフェロン誘導能の比較を行う。HCV RNAは5’末端に2か所のmiR-122結合領域を有する。申請者は、HCVの2か所のmiR-122結合領域に、結合を阻害する変異を導入し、miR-122結合能を有しない変異体HCV genomeを作成した。野生型とmiR-122結合能欠損変異型HCV RNAを細胞内に遺伝子導入し、内因性のインターフェロン誘導能を各種レポーターアッセイにて評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度高額な情報解析機器を購入予定であったが、より安価な物で対応可能であったため購入する必要がなくなり、未使用額が生じた。 消耗品として、anti-miR-122鎖、HCVRNA合成に用いるRNA合成キット、HCV RNAの遺伝子導入試薬、またHCV複製のモニタリング、およびインターフェロン関連遺伝子のレポーターアッセイに使用するルチフェラーゼを相当量必要とするため、研究費の大部分はこれら消耗品に使用予定である。また研究成果に関してはアメリカ肝臓学会(アメリカ、ワシントン)およびC型肝炎ウイルスの国際学会(オーストラリア、メルボルン)での発表を予定しており、それらの学会の旅費・参加費にも研究費を使用する予定である。
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