研究課題/領域番号 |
24790687
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
島上 哲朗 金沢大学, 大学病院, 助教 (50436820)
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キーワード | C型肝炎ウイルス / マイクロRNA122 / 抗ウイルス療法 / C型慢性肝炎 |
研究概要 |
本邦におけるC型慢性肝炎の治療は、C型肝炎ウイルス(HCV)複製に必須な蛋白であるNS5A、NS3、およびNS5Bの機能を直接抑制するDirect Acting Anti-viral Reagent(DAA)製剤が中心となりつつある。しかしながら、DAA耐性ウイルスの出現による治療不成功が今後問題となり得ると考えられる。一方、肝特異的に発現するmicroRNA-122(miR-122)は、HCV複製に必須であり、miR-122のアンチセンス鎖(anti-miR-122)を利用した抗miR-122療法は、耐性ウイルスが出現しにくい点で新規治療法として注目されている。 本年度は、現在本邦において広く臨床で使用されているNS3阻害剤と、anti-miR-122療法の併用による、NS3阻害剤耐性ウイルス抑制効果の有無に関してin vitroの系で検討を行った。この目的のためHCVが慢性的に感染している培養細胞を①anti-miR-122単独、②NS3阻害剤単独、③anti-miR-122+NS3阻害剤併用の3種類の抗ウイルス療法下で4週間処理を行い、経時的にHCVの複製をモニタリングした。その結果、anti-miR-122単独療法下では、持続的なHCV複製の低下を認め、NS3阻害剤単独療法下では、HCV複製は一旦低下後上昇傾向を示した。この結果から、anti-miR-122療法のみではウイルス排除は困難であること、またNS3阻害剤単独では、耐性ウイルスが出現することが明らかとなった。また両治療の併用下では、HCV複製の持続的な低下、さらに最終的なウイルス排除を認めた。本年度の結果から、NS3阻害剤とanti-miR-122の併用は、NS3阻害剤耐性ウイルスの出現を抑制しうる点で極めて有用な治療法であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NS3阻害剤およびNS5A阻害剤とanti-miR-122療法の併用により相加的な抗ウイルス作用が生じることを明らかとした。さらに、長期間のNS3阻害剤およびNS5A阻害剤とanti-miR-122療法の併用により、NS3阻害剤耐性ウイルスやNS5A阻害剤耐性ウイルスの出現が抑制されることを明らかにした。これらは、おおむね当初の研究計画を満たすものである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、anti-miR-122療法の抗ウイルス効果の作用機序の解明を行う。miR-122は、HCVの5'端に結合することが知られている。同部位はRIG-Iなどのインターフェロン誘導に必須な蛋白の異物認識部位として知られている。そのためanti-miR-122療法は、RIG-Iなどの異物認識蛋白によるHCV RNAの認識を促進することで、最終的に内因性インターフェロンを誘導し、抗ウイルス効果を発揮する可能性が考えられる。本年度は、この仮説の検証を行う。 本来、上記研究は、2年目(平成25年度)より開始予定であったが、開始することが困難であった。次年度は(平成26年度)は本来2年目(平成25年度)に行う予定であった、anti-miR-122療法の内因性インターフェロン誘導に与える影響の検討を行う。そのため各種インターフェロン誘導蛋白の抗体、ELISAキットの購入を行う予定である。また研究成果に関しては、アメリカ肝臓学会(アメリカ、ボストン)での発表を予定しており、学会参加のための旅費・参加費にも研究費を使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、2年目(平成25年度)に行う予定であったanti-miR-122療法の内因性インターフェロン誘導に与える影響の検討を行うことが困難であったため、次年度使用額が生じた。 本来2年目(平成25年度)に行う予定であった、anti-miR-122療法の内因性インターフェロン誘導に与える影響の検討を行う。そのため各種インターフェロン誘導遺伝子の抗体、ELISAキットの購入を行う予定である。また研究成果に関しては、アメリカ肝臓学会(アメリカ、ボストン)での発表を予定しており、学会参加のための旅費・参加費にも研究費を使用する予定である。
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