研究実績の概要 |
消化管間葉系腫瘍GIST(gastrointestinal stromal tumor)の病態、予後にかかわる分子メカニズムはいまだ十分解明されていない。GISTの病態、悪性化に関与するシグナル経路および新規遺伝子を同定することを目的に研究を行った。イマチニブによるkitシグナル抑制がGIST抗腫瘍効果を持つため、純粋にkit遺伝子による変化を観察することを目的に293T細胞株にkit遺伝子(野生型、変異型)をそれぞれ導入した。MTTによる細胞増殖能に変化はないものの足場非依存性増殖の亢進を変異型で認め、シグナルではMAPKリン酸化の亢進をわずかに認めた。次にマイクロアレイ解析でこれらの遺伝子発現変化を網羅的に行い10倍以上発現が変動した11遺伝子について臨床20検体(非GIST4、低リスクGIST8、高リスク8)を用いてreal time PCRでmRNA発現を調べリスク分類と対比した。しかし低、高リスク2群で有意差をもって発現が異なる遺伝子は認めなかった。この結果より細胞株モデルではなく実際の臨床検体による網羅的解析を行う方針に変更し、変異遺伝子をマッチングさせた低リスクおよび転移浸潤GISTの2群各4サンプルに対しマイクロアレイ解析でクラスター解析、主成分分析、変動遺伝子抽出を行った。クラスター解析および主成分分析の両者より2群間で遺伝子発現パターンが区別できると考えた。2群間で有意差(p<0.001)をもって変動した遺伝子を抽出し371 gene認め、うち悪性群で発現が10倍以上亢進した遺伝子が9つ(SOX11,FOXL1,CYTL1,EDNRA,ADAMTS8,NEK2,NXPH4,ETV4,ASPM)同定された。今後の展望として、これらのGIST悪性群予測遺伝子を臨床サンプルで評価しGIST悪性化メカニズムに迫る研究を継続していく。
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