研究課題
早期大腸癌は、内視鏡的粘膜下層剥離術などの内視鏡的治療により,根治が望める可能性が高い。しかし、早期大腸癌でも粘膜下層まで浸潤している場合は、約10%にリンパ節転移を認めるため、標準治療はリンパ節郭清を伴った外科的切除とされている。我々は、以前、がん細胞で高発現しているテロメラーゼの構成成分の一つであるヒトテロメラーゼ逆転写酵素のプロモーター依存性に、がん細胞で選択的に増殖し細胞死を誘導するアデノウイルス製剤(OBP-301)を開発し、それを進行直腸癌へ局所投与することにより、ウイルスが領域リンパ節に到達し、リンパ節の転移病巣内で増殖してリンパ節転移を幾分、抑制できることを報告した。このOBP-301は、米国において各種進行固形癌患者に単独投与され、平成20 年で第Ⅰ相臨床試験が終了し、その安全性と臨床効果が確認されている。我々は、リンパ節転移の危険性が10%程度あるばかりに、リンパ節郭清のための外科手術が必須とされている大腸癌の粘膜下層浸潤癌症例において、(内視鏡的)腫瘍切除の際に腫瘍近傍へ増殖型ウイルスOBP-301 の注入を併用するという非常に簡便・低侵襲な処置で、外科治療の必要性の根拠となっているリンパ節転移を制御できないかと考えた。早期直腸癌マウスモデルを用いて、内視鏡的粘膜下層剥離術の要領で、病変近傍の粘膜下にOBP-301を注入し、その後腫瘍を切除した。腫瘍切除後の評価では、OBP-301を併用した群が、併用しない群に比べ優位にリンパ節転移を抑制していた。OBP-301の併用により、低侵襲な(内視鏡的)腫瘍切除で治療が完結できる可能性が示唆された。
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Mol Ther.
巻: 23(3) ページ: 501-509
10.1136/gutjnl-2014-306957.