研究課題
これまで我々は「非代償性肝硬変症に対する自己骨髄細胞投与(ABMi)療法」の有効性及び安全性を多施設臨床研究で明らかにしてきたが、骨髄細胞投与が肝発癌を促進させる懸念があるため肝細胞癌合併例にはABMi療法の適応はない。しかし肝細胞癌合併のない肝硬変症も高発癌状態であるため、高発癌肝硬変マウスに同種同系GFP陽性骨髄細胞を頻回投与する「DEN/GFP-CCl4マウスモデル」を作成し肝発癌動態への影響を評価したところ、骨髄細胞投与により肝内re-dox状態は制御され、肝線維化と肝発癌は抑制されることを確認した。そこで、骨髄由来細胞投与により肝線維化および肝発癌が抑制されるメカニズムの解明を目的とした。初年度は、骨髄細胞による肝線維化抑制メカニズムを解明するため、培養骨髄由来細胞の肝星細胞への影響を解析評価した。培養骨髄由来細胞はCD73/CD90/CD105陽性かつCD45陰性で脂肪・骨・軟骨への分化能を有しており、これら培養骨髄間葉系細胞と肝星細胞との0.4μm-transwell共培養系では、肝星細胞株由来CellROXシグナルは有意に低下し、骨髄間葉系細胞由来のHeme oxygenase-1及びSuperoxide dismutase-3 mRNA発現は有意に亢進していた。さらに肝細胞との接触混合培養では、培地へのLDH放出は有意に抑制され、肝細胞由来CellROXシグナルは有意に低下し、肝細胞由来Nuclear erythroid-2 related factor mRNA発現は有意に亢進していた。従って、培養骨髄間葉系細胞と共培養することで、肝星細胞や肝細胞の酸化ストレス障害は有意に抑制されることが示唆され、培養骨髄間葉系細胞の肝線維化抑制メカニズムとして、肝星細胞や肝細胞に対する酸化ストレス抑制作用があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
骨髄細胞分画のうち通常培養法で培養可能な間葉系マーカー陽性細胞分画には、肝星細胞の酸化ストレス障害を抑制する作用があることが確認され、これが肝線維化改善メカニズムのひとつであることが示唆された。また「MMP9/LacZ-DsRed Tgマウス骨髄細胞投与モデルの肝線維化評価」については、今年度はMMP9/LacZ-DsRed Tgマウスのホモ化まで達成している。
今年度に明らかとなった酸化ストレス抑制作用を有する骨髄由来細胞分画の肝線維化改善メカニズムの解析をさらに進めるとともに、高発癌肝硬変マウスに対する発癌抑制効果の解析評価を進めていく。さらにMMP9/LacZ-DsRed Tgマウス骨髄細胞投与モデルにおけるMMP9発現細胞の動態解析により、肝線維化・肝発癌・レドックス制御機構のクロストークを解明していく。
本年度の研究計画には大きな変更はなかったが、予定試薬の変更等により9,220円の未使用額が発生した。この未使用額は、平成25年度の研究計画において試薬購入費に充当する。
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