研究概要 |
本臨床研究は標準治療不応の進行固形腫瘍患者で、腫瘍部においてRNF43遺伝子の高発現を示す患者を対象として実施した。患者末梢血単核球由来樹状細胞(DC)を作成し、RNF43ペプチド抗原をパルスした成熟DCと患者末梢血リンパ球との共培養によりRNF43ペプチド抗原特異的活性化リンパ球を誘導し、これらの2段階容量漸増試験 (レベル1及び2各5例、合計10例)を免疫寛容因子の排除を目的とした少量シクロフォスファミド(CPM)による前処置後に行った。適応患者が少なく症例集積に長期間を要したが目標症例10例を完遂することができた。主要評価項目の安全性評価では、本療法による重篤な有害事象は認めず、認容できるものであった。副次評価項目である臨床効果は試験開始4週間後に10例中9例が安定(Stable Disease;SD)、1例が進行(Progressive Disease;PD)、7週間後では10例中6例がSD,4例がPDであった。SD中2例では腫瘍マーカーの低下と水腎症の改善等明らかな臨床的効果が確認され、他の1例では一部の病変が縮小した。免疫学的評価は現在解析中であるが、CPM投与後に末梢血中の制御性T細胞数が有意に低下し、低下の程度が大きいほど臨床効果が良い傾向が認められた。また末梢血中のRNF43-CTLが増加した症例では良好な臨床効果を認め、同T細胞数と臨床効果間の関連性が示唆された。さらに、血清サイトカイン(IL-6、IL-10)濃度が高い症例では臨床効果が認められない傾向にあった。以上の様に、各種免疫学的解析を行うことで効果予測因子等の検索を行うことは、免疫療法継続の適応決定上重要であると考えられた。 尚、本療法に用いた細胞製剤はGood Manufacturing Practice準拠細胞調製室で細胞の調製が行われ、全例品質試験に問題なく出荷基準を満たし投与が行われた。
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