我々はこれまでにカプセル内視鏡(以下CE)を用いて、潰瘍性大腸炎(以下UC)患者の小腸を検索し、UCの病態と小腸病変の関連の詳細を全世界に先駆けて報告している。今回の研究では、UC患者の小腸病変をまずCEを用いてより詳細な検討を行い、UCの評価方法としてのカプセル内視鏡の有用性を検討することを目的とする。またCEで見いだされた病変に対しては小腸内視鏡で生検を行い、その病理学的な特徴や、遺伝子異常を解析することによりUCの発生メカニズムの解明や新たな治療への応用を目指すものである。 今回、UC患者25名と健常ボランティア23名のカプセル内視鏡所見の比較を「消化器内科 Vol.56 No.3 262-8」において報告した。これまでの検討と同様にUC患者は健常ボランティアと比較して有意に小腸病変の頻度が高く、病変数が多い結果であった。本研究で特に注目したいのが、初発のUC患者の多くに小腸病変を認め、また小腸病変の重症度がUCの重症度と相関したことである。また治療により緩解導入が得られたのちにCEを再検すると小腸病変も改善していた。 今年度の研究実施計画としては、同意の得られた患者よりバルーン内視鏡を用いて小腸病変より生検を行い遺伝子プロファイルを作成中し、疾患遺伝子の同定、治療への道筋を立てることと、病理学的な検査を行い浸潤炎症細胞、サイトカインなどを検討することである。炎症細胞の同定や部位の特徴がわかればそれに対する治療の足がかりになると思われる。
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