研究概要 |
わが国のUCの患者数は、113.306人(平成21年度特定疾患医療受給者証交付件数より)と報告されており、毎年おおよそ8,000人増加している。病因としてはこれまでに腸内細菌の関与や腸管免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の欧米化などが考えられているが、まだ原因は不明である。これまでUCの病変は大腸に限局すると考えられてきたが、近年、胃・十二指腸などの上部消化管や、全大腸炎型から回腸末端に連続する逆行性回腸炎(backwashileitis)や大腸全摘後の回腸嚢炎(pouchitis)など大腸以外の病変の報告も散見される。しかし、これまでその解剖学的な特徴により長らく暗黒の臓器と呼ばれていた小腸に関しての報告は非常に少なく、その病態は不明であった。我々は全消化管を可視化できる新規モダリティであるカプセル内視鏡を用いて、潰瘍性大腸炎患者の小腸病変の実態解明を行うためにカプセル内視鏡を施行した。 カプセル内視鏡の所見では、健常人は小腸病変の有所見は10%程度であったのに対して、潰瘍性大腸炎患者では約60%程度の患者に小腸病変を認め、有意に小腸病変の有所見率が高かった。また小腸病変の重症度は、クローン病などで用いられるルイススコアで評価したが、潰瘍性大腸炎の重症度のDAIと有意に相関していた。初発未治療患者では約90%の患者は小腸病変を有していた。さらに治療により寛解導入した後にカプセル内視鏡を再検すると、小腸病変は改善していた。潰瘍性大腸炎の活動期では下部消化管内視鏡検査w行うと症状の像悪などを認めることがあり、カプセル内視鏡は非襲侵的に潰瘍性大腸の病態を把握するのに有用なツールである可能性が示唆された。本研究の成果を、英文誌Digestionおよび、和文誌 消化器内科に報告した。
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