研究概要 |
現在までにHCVの持続感染の原因として、制御性T細胞、IL-10産生CD4 T細胞、抑制性補助シグナルであるPD-L/PD-1およびの関与を明らかにしてきた。本年度は、C型慢性肝炎患者の末梢血を用いて以下の検討を行った。①HCV, EBV, CMV, influenza virus特異的CD8 T細胞の同定 HLA A24拘束性class1 tetramerを用いてフローサイトメトリーにより検討したところ、既知の報告どおり末梢血リンパ球中に0.01%から0.7%の頻度でウイルス特異的CD8 T細胞を検出することができた。②C型慢性肝炎患者の末梢血中HCV特異的CD8 T細胞の表現型の検討(細胞表面染色) 末梢血中HCV特異的CD8 T細胞は他のウイルス特異的CD8 T細胞と比較し、有意に高いPD-1, CD160, LAG-3の発現を認めた。一方4-1BB, CTLA-4に関してはほとんど発現を認めなかった。③C型慢性肝炎患者の末梢血中HCV特異的CD8 T細胞のサイトカイン産生能(細胞内サイトカイン染色) HCV特異的CD8 T細胞はHCV非特異的CD8 T細胞と比較し、有意にTNF-a, IFN-gの産生が乏しかった。一方IL-10に関してはいずれのウイルス特異的CD8 T細胞もほとんど産生を認めなかった。Preliminaryの段階であるが、特にPD-1陽性CD8 T細胞はTh1サイトカインの産生が乏しい傾向にあった。 以上の結果より、末梢血中HCV特異的CD8 T細胞は抑制性補助シグナルの高発現、エフェクター機能の低下を認め、持続感染に寄与している可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、第一に抗ウイルス療法中のHCV特異的CD8 T細胞機能の経時的変化と補助シグナル阻害による機能修飾の検討を行っていく。具体的にはGenotype 1b、高ウイルス量の難治例におけるPeg IFNとリバビリン、プロテアーゼ阻害剤による3剤併用療法中の末梢血中HCV特異的CD8 T細胞の割合、エフェクター機能を投与前、1W, 2W, 4W, 8W~48Wまで経時的に検討し、治療効果との相関を明らかにする。可能な限り投与前、投与終了時に肝生検を行い、肝内浸潤HCV特異的CD8 T細胞との比較検討を行う。さらに前年度の検討においてエフェクター機能の改善が認められた抑制性補助シグナルの機能的阻害抗体を用いて経時的にHCV特異的CD8 T細胞の機能修飾をin vitroで検討し、抗ウイルス療法抵抗症例に対する新規免疫療法の確立を目指す。他施設からの報告によると、ウイルス量が多いほどPD-1の発現は亢進しており、逆にPD-L/PD-1シグナル阻害による機能修飾に抵抗性を示す。抗ウイルス療法開始後、ウイルス量の低下に伴い各補助シグナルの発現が低下し、その結果各シグナル阻害抗体に対する反応性も高まることが予想される。将来的に抗ウイルス療法との併用により早期にウイルス量を減らすことが可能となれば、治療効果を高めることができると考えている。さらに、次年度以降に肝細胞癌特異的CD8 T細胞の機能解析を行い、発癌の免疫学機序の解明したいと考えている。
|