Reactive Oxidative Speices (ROS)のバランス変化に伴う酸化ストレスは、組織修復機転障害を誘導し肝疾患を進展させる。NADPHオキシダーゼ(NOX)は酸素をスーパーオキシドに変換するが、NOXの活性異常に伴う過剰なROS産生は組織修復機転の破綻を惹起する。一方、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)はスーパーオキシドを過酸化水素に変換する酵素であるが、グリア細胞においてSOD1はGTP結合タンパク質であるRac1を介してNOXを制御していることが報告されている。以上より本研究ではSOD1とNOXによるROS産生の制御と肝組織修復機転との関連を調べた。またNOX阻害剤による肝組織修復機転への効果についても合わせて検討した。まず、四塩化炭素および胆管結紮による肝線維化モデルを野生型マウス、変異SOD1マウスでそれぞれ作成した。肝線維化は変異SOD1マウスで増悪したが、NOX阻害剤により改善した。次にそれぞれのマウスより肝星細胞を単離し活性化を調べたところ、変異SOD1マウスで強い活性を示しかつROSの産生増強を認めた。一方、NOX阻害剤を添加すると変異SOD1肝星細胞の過剰活性が抑制された。変異SOD1マウスにおける肝線維化の増悪および肝星細胞の過剰活性の機序として、SOD1の変異によるRac1の活性化に伴い、NOX1およびNOX4の発現増強が惹起されROS産生が起こり、線維化および肝星細胞の活性化が増強するものと考えられた。次に肝再生について検討した。野生型マウスおよび変異SOD1マウスに対して70%肝切除を行い、肝再生を検討したが明らかな差は認めなかった。本研究によって肝星細胞ではSOD1によるNOXの発現調節によりROS産生が制御されることが明らかになった。肝線維化のエフェクター細胞である肝星細胞においてSOD1によるNOXの制御は肝星細胞の活性化に重要であることが示された。
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