研究課題/領域番号 |
24790736
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
許 東洙 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20616651)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 心房細動 / 肥満 / カルシウム調節 |
研究概要 |
本研究は、肥満が心房細動の発症にどのように関わっているのかは不明であることから、肥満モデル動物における心房リモデリングに、NAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1(SIRT1)が鍵分子として関与し、その発現・活性の低下がエネルギー代謝や炎症、カルシウム調節機構に変化をもたらすことで心房細動の起こりやすい基質が形成されているという仮説を立証し、さらにその知見に基づいた心房細動の新たな予防的治療法の開発を目指して計画した。 平成24年度には高脂肪食投与による肥満ラットモデル動物を用いて電気生理検査・心房細動誘発試験を行い、肥満に基づくin vivoでの電気生理学的変化、病理組織評価を行った。また心房における哺乳類サーチュイン関連因子、カルシウム調節因子の遺伝子・タンパク発現を評価した。健常ラットおよび肥満ラットにおける心房単離心筋を用いて、カルシウムイメージングを行った。結果、高脂肪食肥満モデルでは心房細動の誘発率と誘発時間が有意に延長し、電気生理検査では、心房の有効不応期が有意に短縮されていることが分かった。病理学所見では、線維化が高脂肪食肥満モデルで著しく進んでおり、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン、カルシウム調節因子であるp-CAMKII, p-SERCA, p-RYR,が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、高脂肪食肥満モデルは、カルシウムハンドリングの変化が、メタボリックシンドロームでAFを促進する催不整脈性基質の形成に関与している可能性があることを確認した。しかし、今回の実験でNAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1の変化は認めず、さらに、sirtuin-1がカルシウム調節機構との直接関連は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、高脂肪食肥満モデルは、心房細動の起こりやすい基質が形成されていて、その原因としては、心房の有効不応期が有意に短縮され、関連のカルシウム調節因子が高脂肪食肥満モデル有意に増加しており、肥満は、メタボリックシンドロームなどの原因でAFの重要な危険院であることを、実験的に証明した。しかし、当初予測していたNAD+依存性脱アセチル化酵素であるsirtuin-1とAFとの関連は今回の実験で認められなかった。 今後、オメガ3脂肪酸とエネルギー代謝や炎症、カルシウム調節機構との関連をし調べ、さらに、オメガ3脂肪酸であるDHA, EPAの投与し、効果を調べる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続き高脂肪食動物モデルにオメガ3脂肪酸を与えて、心房細動につながる炎症、または、カルシウム調整異常などの軽減効果を解析する予定である。 モデル動物としてラットとマウス2種類を用いる。 通常食群、高脂肪食群、高脂肪食群+DHA群、高脂肪食群+EPA群, 高脂肪食群+DHA+ EPA群の4群に分ける。またob/obマウス(6週齢、オス)も同様に、野生型マウス(対照群)、ob/obマウス無治療群、ob/obマウス+resveratorol群に分ける。実験開始前と12週後に、体重測定および小動物用CTにて内臓脂肪量・心外膜周囲脂肪量を評価する。また心エコーにて左心機能や左房径を評価する。経静脈的に電極カテーテルを心房に挿入し、電気生理検査を行う。心房細動誘発率、心房細動持続時間、心房有効不応期などをin vivoで測定する。テレメトリ-心電図を装着し、覚醒下での自然発生的な期外収縮や心房細動の発生を調べる。また、血清中・内臓脂肪中のアディポサイトカイン(adiponectin、leptin、MCP(monocyte chemotactic protein)-1など)をELISA法で測定する。オメガ3関連因子、およびカルシウム調節関連分子(L型カルシウムチャネル、心筋リアノジン受容体、ホスホランバンなど)の遺伝子・タンパク発現・およびリン酸化タンパクの発現を、real-time RT-PCR法・Western blottingにより解析する。続いて、それぞれから心房筋を単離し、蛍光カルシウム指示薬Fluo-3を添加し、共焦点レーザー顕微鏡にてカルシウムスパークを測定する。初代心房培養細胞(またはHL-1心房筋細胞)に脂質負荷を行い、脂質関連ペプチドを添加した際の細胞内カルシウム動態について、同様に測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していた実体顕微鏡は他の研究室の好意で譲ってもらい、テレメトリー心電図システムは実験の内容と進行が一部変更になってしまい、購入を平成25年度に見送りしたため、予定していた約80万は平成25年度に繰り越しとした。平成25年度は次年度使用額と平成25年度申請額(直接経費)約230万の使用を予定している。平成25年度は心電図解析システム150万、遺伝子・タンパク解析試薬、電気生理用器具・試薬(電極カテ・パッチ試薬)、チューブなどの実験用品、実験動物、実験動物の飼育費など、消耗品として80万を計上する。
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