研究課題/領域番号 |
24790743
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石田 純一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10625536)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 転写因子KLF6 / 肥満 / 糖尿病 |
研究概要 |
肝臓と脂肪組織それぞれにおける臓器特異的KLF6ノックアウトマウスを用いた検討を行っている。 (i) 肝臓特異的KLF6ノックアウトマウスの解析 肝臓特異的KLF6ノックアウトマウスは既に作成済みで、予備検討および増殖段階に入っていたため、スムーズに実験を進めることが可能であった。予備的検討ではKLF6がPPARaの発現を制御することが示唆されていたが、さらに解析を進めたところ以下のような事実が明らかとなった。肝臓特異的KLF6ノックアウトマウスは高脂肪食負荷条件下では全身のKLF6ノックアウトマウスと同様に、体重増加が対照群と比較して有意に低減されており、インスリン抵抗性を呈しにくく、耐糖能はより保持されていた。KLF6をノックアウトした肝細胞を用いた培養細胞実験ではKLF6ノックアウトによりPPARaの下流因子であるTrb3やPEPCKのmRNAの発現が低減していた。PPARaの発現に関してはmRNAレベルでは影響を受けない一方で、タンパクレベルでは有意に低減されていた。KLF6のPPARaに対する作用は転写後調節であることが想定された。miRNAの発現をチェックしたところ、KLF6はmiRNA 10bの発現抑制を介して、PPARaの発現に間接的に関与していることが分かった。 (ii) 脂肪組織選択的KLF6ノックアウトマウスの解析 下記のように脂肪組織特異的KLF6ノックアウトマウスを作成した。計画通りKLF6 floxマウスと脂肪組織特異的にCre recombinase を発現するaP2-Creマウスを繁殖させ、それらを交配させることにより、脂肪組織特異的KLF6ノックアウトマウスのラインを獲得した。現在繁殖体制に入るとともに、少数例による予備的検討として高脂肪食負荷下において特に脂肪組織に着目した表現型の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノックアウトマウスの作成および繁殖にやや時間を要したものの、研究の進捗はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在すでに検討中である (i) 肝臓KLF6ノックアウトマウス、(ii) 脂肪組織特異的KLF6ノックアウトマウスの表現型解析を継続する。肝細胞におけるKLF6の役割についての検討は順調に進行している。脂肪細胞におけるKLF6の役割についても同様に検討していく。まずはマウスを繁殖させ、安定供給できる体制を作る。その後マウスから脂肪細胞を獲得し、KLF6機能解析のための研究につなげる。 また従来の計画には入っていないが、糖尿病の発症機序に肥満に伴う慢性炎症が関与すること、KLF6が炎症に関与する因子であることが示唆されており、炎症に着目した実験系も視野に入れる。 当初肝臓や脂肪組織でのKLF6が大きな役割を果たしていないと判明した場合は2年目において骨格筋におけるKLF6の役割を検討することも視野に入れていた。しかし現時点で肝臓におけるKLF6はPPARaの発現調節に重要な役割を果たすことが分かってきたため、骨格筋における追加検討は行わない予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス実験、マウスの維持費、培養細胞実験、その他研究に必要な物品の購入に充てる。 また年に二回程度の国内および国外の学会活動を通じて、研究の促進につなげるため、学会参加費用も捻出する。
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