研究課題/領域番号 |
24790744
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 由子 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (80436477)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 循環器疾患 / 動脈硬化 / 疫学研究 / 感染 / 酸化ストレス / 甲状腺機能 / バイオマーカー |
研究概要 |
本年度は疫学研究に焦点を置き、手始めとして東大検診部の受診者データベースの構築を外部委託業者との共同開発の形で実施した。その結果、平成17年から現在に至る、延べ、14620名 の、検診データが安定的に供給できる研究の素地が整った。 その上で、本科研費申請書にて既に紹介した予備検討「病態刺激因子が心血管系疾患に及ぼす影響」2研究につき再検証を行い、「①心不全や心房細動の指標とされるヒト脳性ナトリウムペプチドの上昇と早期動脈硬化指標IMTの関連性」については、第85回米国心臓病学会で、「②ヘリコバクターピロリ感染及び胃癌の予測因子ペプシノゲン比(pepsinogen I/II)と早期動脈硬化の相関」については、第76回日本循環器学会Featured Research Sessionで結果発表を行い、国内外の研究者と発展的な討議が出来た。 また新規テーマとして、潜在性甲状腺機能低下症と早期動脈硬化の関係、歯科検診結果と循環器疾患の関連、保険指導介入の成果、消化器疾患と動脈硬化など、心血管病を基軸にドック特殊性を活かした研究課題が多数進行中である。中でも、鉄過剰と動脈硬化についての関連は、鉄摂取量が男性の心筋梗塞発症に関連するとした1992年の報告以来、複数の大規模臨床試験の検討(ARIC study, SHIP study)を経てもその関連性についてのコンセンサスが得られていない。そこで鉄過剰と動脈硬化の関係につき独自の検証を行い、健常者の鉄過剰状態が動脈硬化の促進因子になりうることを見出した。本邦初の検討であり、第86回日本超音波医学会でその結果を発表する。 その他、検診部内のデータベースを東大検査部の生理検査データとリンクさせ、各種検査の詳細データがタイムリーに反映されるシステムの構築にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想に反して、データベースの構築に難渋した。システムの導入だけでは補いきれない部分も多くあり、紙またはPDF媒体のデータを手入力で行うなど、作業は煩雑で時間を要することが多い状況であった。そのような逆風の中でも、「循環器疾患を基軸に他領域の疾病をも対象とした幅広い統計解析を行い、生物学的血液指標と多岐にわたる疾病因子の関連性を明らかにする」という当初予定していた「疫学研究」の研究項目は概ね順調な進捗状況であるといえる。すでに3つの研究を学会発表し(予定含む)、各々の研究結果は近日中に論文投稿し国内外に発信する。 一方、予定していた第二の研究項目、「酸化LDLの検証」については、Pilot Studyの形で予備検討を行ったものの新規性のあるデータが得られず、限られた予算の中では遂行不可能と判断し中断した。しかし酸化ストレスが動脈硬化の要となる病態刺激であることには異論なく、LDLに特化せず視野を広げた検証を行うことをその代替案とした。「研究実績の概要」で詳述した鉄過剰と動脈硬化の関係の検証も酸化ストレスの研究の一環である。 酸化LDL研究が予想外れであったことを反省点とし、(1)ではなく(2)おおむね順調に進展している、との自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はデータベースの構築とその解析(疫学研究)を精力的に行い、研究テーマ「循環器系疾患の病態解析と循環器予防学の確立」の初動としては十分な成果が得られたため、来年度以降は、既存のデータ解析を継承しつつ、本年度の疫学研究から得られた知見に立脚した形で、被験者の血液検体を解析する予定である。限られた時間と研究費の中で一定の成果を出すには、費用対効果の面にも留意する必要があり、多方面との協議の結果、発展的取り組みとして予定していた「MALDI質量分析を用いた研究」は当面保留とする。 また、疫学研究の発展的試みとして、(1)経年変化に焦点を置いたretrospective studyや、(2)これまでの研究結果を予備検討としたprospective studyのデザインを計画する。 データベース構築の発展的試みとしては、服薬リストのコード化を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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