研究課題
動脈硬化性疾患の発症リスクや危険因子に関し、新しい視点による疫学研究が求められている。近年、検診や人間ドックの浸透に伴い、健常者において無症候性の潜在性甲状腺機能低下 (subclinical hypothyroidism(SCH))が散見されるが、治療介入の是非は定まらない。一般に、顕在性の甲状腺機能低下症では、脂質異常の他、炎症反応の増強や血管内皮機能障害などが動脈硬化の進展に関与する。甲状腺疾患の既往歴のない連続706例から、潜在性甲状腺機能低下症(SCH)の57例を抽出、年齢と性別をマッチさせた甲状腺機能正常(euthyroid)171例をコントロール群とし、総頸動脈の最大内膜中膜複合体厚(max IMT: maximum intra-media thickness)を計測した。単変量解析では、SCHにおいてHDLコレステロールが高値であったが、その他の項目(血圧、Body mass index、HDL-C以外の脂質指標、ヘモグロビンA1c (HbA1c)、Brain natriuretic peptide、CRP)については両群間に差を認めず、一方、max IMTはSCHで1.89mm、コントロールで1.65mmとSCHで有意に高かった。多変量解析では、TSHがmax IMTの独立した規定因子であり、潜在性甲状腺機能低下症と早期動脈硬化の関連が認められた。また、脂質、蛋白質、糖、核酸などの酸化変性を促す活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)の過剰生成は、体内の酸化ストレスを増加させ、心血管疾患、糖尿病、癌を惹起する。酸化促進因子である鉄に焦点をあてた前年度の研究に引き続き、被験者検体の酸化ストレス指標を計測し心血管疾患との関連を検討した。
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日本人間ドック学会誌
巻: 29 ページ: 484-489