研究課題/領域番号 |
24790745
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
木下 耕史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10585920)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / 疾患モデル / 心筋誘導 / 遺伝性心疾患 / 不整脈 / LQT / イオンチャネル / パッチクランプ |
研究概要 |
健常人ヒト末梢血からiPS細胞を樹立し、心筋細胞誘導に成功した。末梢血を採取後、単核球を単離し、T細胞の増殖を促すため、IL-2/CD-3抗体を添加した培地で4日間培養した。活性化T細胞はセンダイウイルスベクターにより山中4因子を感染後、マウス胎児繊維芽細胞上で約10日間培養した。初期iPSコロニーは継代時にセンダイウイルスベクター特異的なsiRNAを発現させることにより、効果的にベクターの除去を行うことができ、感染から約1ヶ月で成熟iPS細胞を誘導することができた。得られたiPS細胞は免疫染色を行い、幹細胞マーカーであるNanog、SSEA3、Oct4、Tra-1-60の発現を確認した。iPS細胞から心筋細胞への誘導には、GSK-3β阻害剤でwnt/βカテニンシグナル経路活性化に働くCHIR99021と、wnt/βカテニンシグナル経路アンタゴニストであるIWP-4の2つの化合物を用いた。iPS細胞をマウス胎児繊維芽細胞非存在下で培養し、コンフルエントになった時点で誘導を開始した。培地には拍動するまでRPMI+B27サプリメント(インスリン不含)を、拍動後はRPMI+B27サプリメント用いた。誘導1日目はCHIR99021(8μM)を添加し中胚葉分化を導き、誘導3日目にはIWP-4(10μM)を添加することにより心筋細胞分化を誘導した。本方法では約10日で拍動する心筋細胞を確認することができた。得られた心筋細胞を免疫染色により、心筋特異的マーカーであるα-アクチニンの発現を確認した。また、RT-PCRにより、GATA4、Nkx2.5、TNNT2、MYH6、MYH7、MYL2、MYL7、KCNQ1、SCN5A等の心筋細胞特異的遺伝子の発現を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった初年度中のiPS細胞の樹立と心筋細胞誘導は達成された。iPS細胞の特性評価に関しては、ALP染色、幹細胞マーカーの免疫染色、およびRT-PCRのみを行ったが、さらにテラトーマアッセイ、DNAメチル化解析、核型解析も行う必要がある。心筋細胞については、免疫染色とRT-PCRによる心筋細胞マーカーの確認は済んでいるが、継代維持と活動電位測定時の培養条件についても検討していく必要がある。また、拍動する心筋細胞はパッチクランプ法により活動電位持続時間(Action Potential Duration: APD)を測定するが、APDは心房型、心室型、ペースメーカー型の3波形に分類されることが知られている。本研究で誘導された心筋細胞はそれぞれ何割ずつのタイプが混在しているか調べていく。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本学付属病院循環器内科の協力のもと、イオンチャネルにアミノ酸変異のある患者由来の心筋細胞の誘導、および特性評価を行っていく。初年度に得られたノウハウを生かし、採血から心筋誘導までは2ヶ月程度で実現可能であると考えている。現在予定している患者は活動電位の再分極に働くカリウムチャネルをコードするKCNQ1遺伝子の変異を持つ。患者はこれまでに失神歴はないが、二次性(薬剤性)不整脈を引き起こす可能性を調べるため、患者由来の心筋細胞を用いて、薬物負荷試験を行う予定である。薬物はイソプロテレノール投与による交感神経刺激を予定する。薬物投与時の活動電位持続時間の変化、また拮抗剤であるプロプラノロールによる応答も野生型と比較する。さらに蛍光顕微鏡によるカルシウムイメージングを行い、収縮時の細胞内カルシウム濃度変化を測定する。将来的には遺伝性不整脈に限らず、心筋症等の遺伝性心疾患を煩う患者の同意が得られれば、患者由来iPS細胞を樹立し、心疾患研究に役立てられるようにしておく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|