研究課題
活動電位の再分極に働くカリウムイオンチャネルをコードするKCNQ1の遺伝子変異(G1768A)は、膜移行能が約60%低下し、膜電流も半減するが、正常型と共発現させた場合はそれらの機能は正常型と変わらないことが判明している。この遺伝子変異をヘテロで持つ患者は、心電図はQT間隔がやや延長しているものの(QTc: 463ms)、これまでに既往歴、または家族歴もないことから、野生型遺伝子によるレスキューが働いていると考えられる。しかしながら運動時など交感神経が優位に働く際のチャネル機能不全、また二次性(薬剤性)不整脈を引き起こす可能性が健常人より高いことも考えられ、今後の不整脈リスク管理に役立てるべく患者iPS細胞由来の心筋細胞を用いて薬物負荷試験を行った。Multi Electrode Array(MEA)上に撒かれた心筋細胞に対し、交感神経刺激としてイソプロテレノールを順に10、30、100 nMで投与し、薬物投与後の細胞外電位持続時間(Field Potential Duration: FPD)と拍動数変化を健常人由来の心筋細胞と比較した。FPDは薬物投与前を1として投与後の短縮時間の割合を求めたところ、正常型では10 nM、30 nM、100 nMの順に1.4 ± 4.0 %、26.5 ± 6.7 %、31.9 ± 9.1 %短縮し、変異型ではそれぞれ12.8 ± 7.9 %、25.5 ± 8.6 %、36.4 ± 5.4 %短縮した。10 nMで変異型の短縮割合が大きい結果となったが、有意差はなかった。拍動数の変化は、正常型で投与前、10 nM、30 nM、100 nM の順に41.5 ± 2.7 bpm、57.8 ± 4.3 bpm、62.3 ± 3.7 bpm、68.8 ± 4.3 bpmであったのに対し、変異型でそれぞれ38.8 ± 0.7 bpm、63.7 ± 3.9 bpm、69.6 ± 5.8 bpm、72.6 ± 2.8 bpmであり全濃度で有意差はなかった。今回の結果では、変異型チャネルを発現する心筋細胞の異常な薬物応答性は観察されなかったが、今後はより薄い濃度での薬物応答性を調べる必要がある。
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