研究課題
本研究の目的は、心筋症患者を対象として、第一に新しい候補遺伝子である心筋ミオシン軽鎖キナーゼ(MYLK3)遺伝子の変異を検索し、遺伝子変異と臨床表現型との関係を明らかにすることである。第二に、MYLK3遺伝子変異を培養細胞およびゼブラフィッシュ受精卵に導入し、in vitroおよびin vivoの両面から心筋症・心不全の発症進展機序を解明することである。平成24年度に以下の項目につき実施した。[1] 拡張型心筋症・肥大型心筋症のDNAサンプル収集・臨床情報収集、[2] MYLK3遺伝子変異の同定:拡張型心筋症1例、肥大型心筋症3例においてMYLK3遺伝子変異を同定した。拡張型心筋症で同定した変異はtruncation mutationであり、また肥大型心筋症で同定した変異はいずれもmissense mutationであった。[3] 家族調査ならびに臨床的特徴の把握:遺伝子変異が見い出された家系において、MYLK3遺伝子変異の有無と臨床表現型の一致を確認した。[4] in vitroキナーゼアッセイ:拡張型心筋症で同定したtruncation mutationにより、MLCKの酵素活性が消失することを明らかにした。平成25年度に以下の項目につき実施した。[1] Gal4-UAS法を用いて、拡張型心筋症で同定したtruncation変異型MLCKを心筋に発現するゼブラフィッシュを作成した。[2] 変異型ゼブラフィッシュの心機能解析:変異型ゼブラフィッシュは心腔拡大を呈することを明らかにした。[3] 変異型ゼブラフィッシュの病理学的観察:ブロックから凍結切片を作成した。現在、切片に対してヘマトキシリン・エオジン染色を行った上で、光学顕微鏡下に心室壁構造の観察や心室壁厚の計測を行っている。
2: おおむね順調に進展している
心筋症患者におけるMYLK3遺伝子変異の同定・臨床表現型の確認・in vitroキナーゼアッセイによる機能解析・ゼブラフィッシュモデルを用いたin vivo解析が順調に実施されたため。病理学的観察については、手技の習熟を要するため、当初予定していた期間よりも更に若干の解析期間を要する。
病理学的観察を更に進めるために、ゼブラフィッシュの組織解析に習熟した研究者との交流を行う。具体的には、国立循環器病研究センターの瀬口理博士とミーティングの機会を設定する。MYLK3遺伝子変異による心筋症患者の予後調査を行い、臨床データの補強を行う。収集した臨床データとin vitro, in vivo機能解析データの対比を行い、説得力を持った論文となるように全体を構成する。
遺伝子解析が順調に進んだため、遺伝子解析用試薬としての消耗品支出が予定よりも小額であったため。ゼブラフィッシュ機能解析用の試薬としての使用を計画している。
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