研究課題/領域番号 |
24790749
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
藤岡 大佑 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70377513)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホスホリパーゼA2 / 酸化LDL / マクロファージ / ノックダウン / 過剰発現 / endosome |
研究概要 |
当初、野生型とV型sPLA2のノックアウトマウスから採取した腹腔内マクロファージを使用し、マクロファージによる酸化LDL取り込み実験を開始した。しかしながら当該細胞が初代培養細胞であり、採取できる細胞数が限られていたこと、また細胞の状態が安定せず毎回同様な状態の細胞が得られなかったことなどから、初代培養細胞の使用を断念し、マウスマクロファージの細胞株であるRaw264.7細胞を使用することとした。 Raw264.7細胞に、レンチウイルスベクターによるV型sPLA2のshRNAを導入し、細胞株化した。これにより、野生型の細胞とV型sPLA2のノックダウン(KD)細胞が比較可能である。この細胞で酸化LDL取り込み実験を行い経時変化を見たところ、V型sPLA2のKD細胞では野生型の細胞と比較して酸化LDLを取り込んで消化処理する速度が遅延していることが観察された。この機序を解明するために、酸化LDL取り込み時のアクチン重合度(細胞内輸送に密接に関与している)を各細胞群で比較したところ、V型sPLA2のKD細胞ではそれが低下していた。また細胞内に取り込まれてearly endosomeへと運搬された酸化LDLは、さらにlate endosomeへ転送されるが、V型sPLA2 KD細胞ではlate endosomeへの運搬が遅延していた。これらの現象を規定している細胞内シグナルをスクリーニングしたところ、V型sPLA2 KD細胞ではSrcの発現が恒常的に低下しており、この活性が低下しているものと考えられた。 以上が初年度の研究成果であるが、これらの事象は、V型sPLA2がマクロファージにおいて酸化LDLを取り込んで泡沫化する現象を正に調整していることを示している。このことは生体内でV型sPLA2を選択的に阻害することにより、動脈硬化が抑制される可能性があることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では野生型とV型sPLA2ノックアウトマウスマクロファージを使用して酸化LDLの取り込みを比較し、その違いの原因となっている事象とシグナルを同定することが初年度の計画であった。 研究実績の内容の項でも述べたように、マウスの腹腔内マクロファージの初代培養細胞では実験が安定しなかったため、細胞株であるRaw264.7細胞を使用することとした。そのためV型sPLA2をノックダウンする必要性から、細胞にshRNAを導入して細胞株化するところで4か月を要した。したがって、スタートが当初の予定よりも半年ほどずれ込み、現在までの達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計画で実行できなかった、アクチンの再構成を直接調整しているRho GTPaseの活性化を、作成した細胞株で比較検討する。その後、この事象に関わっているシグナル経路の同定を行う。中でもSrc-Syk-PI3K経路は可能性が高い。 以上を同定することと同時進行で、V型sPLA2を過剰発現させたRaw264.7の細胞株を樹立し、酸化LDL取り込み能を評価する。また、V型sPLA2の酵素活性を欠失させたmutantを過剰発現するRaw264.7細胞株も樹立し、sPLA2の酸化LDLマクロファージ内取り込み調節能が酵素活性に依存しているのか否かも確認する。 シグナルが同定された後、そのシグナルの既知の阻害薬を用いて酸化LDL取り込み能を評価し、阻害剤のin vitroでの泡沫化抑制に対する有用性をスクリーニングする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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