研究課題/領域番号 |
24790749
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
藤岡 大佑 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70377513)
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キーワード | ホスホリパーゼA2 / 酸化LDL / マクロファージ / ノックダウン / 過剰発現 / endosome / Src |
研究概要 |
Raw264.7細胞に、レンチウイルスベクターによるV型sPLA2のshRNAを導入し、細胞株化した。この細胞で酸化LDL取り込み実験を行い経時変化を見たところ、V型sPLA2のKD細胞では野生型の細胞と比較して酸化LDLを取り込んで消化処理する速度が遅延していることが観察された。この機序を解明するために、酸化LDL取り込み時のアクチン重合度(細胞内輸送に密接に関与している)を各細胞群で比較したところ、V型sPLA2のKD細胞ではそれが低下していた。また細胞内に取り込まれてearly endosomeへと運搬された酸化LDLは、さらにlate endosomeへ転送されるが、V型sPLA2 KD細胞ではlate endosomeへの運搬が遅延していた。これらの現象を規定している細胞内シグナルをスクリーニングしたところ、V型sPLA2 KD細胞ではSrcの発現が恒常的に低下しており、酵素活性も低下していた。このSrcの発現を規定するプロモーター領域をルシフェラーゼ発現ベクターにクローニングし、野生型細胞とV型PLA2 KD細胞にトランスフェクションしてルシフェラーゼの発現を比較したところ、V型PLA2 KD細胞でルシフェラーゼの発現が低下していた。このプロモーター領域を用いてゲルシフトアッセイを行ったところ、V型PLA2の蛋白を添加した際にゲルシフトが観察された。これらの結果は、V型PLA2が何らかの形でSrcのプロモーター領域に作用し、Srcの発現調節に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では野生型とV型sPLA2ノックアウトマウスマクロファージを使用して酸化LDLの取り込みを比較し、その違いの原因となっている事象とシグナルを同定することが初年度の計画であった。しかしながらマウスの腹腔内マクロファージの初代培養細胞では実験が安定しなかったため、細胞株であるRaw264.7細胞を使用することとした。そのためV型sPLA2をノックダウンする必要性から、細胞にshRNAを導入して細胞株化するところで4か月を要した。したがって、スタートが当初の予定よりも半年ほどずれ込み、現在までの達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでV型PLA2 KD細胞で示してきた事象は、Srcの発現低下によるものであることがおおむね説明できる。このデータをもとに最終年度は阻害薬による実験を推進させ、動脈硬化進展に対する新たな治療方法の開発を行ってゆく。
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