研究課題
本研究では、iPS細胞由来心筋細胞を用いて、心筋梗塞後心不全に対する再生医療を実現するため、1)新たな細胞移植方法の開発、2)細胞移植後の致死性不整脈の発生頻度の検討、3)移植心筋細胞と宿主心筋細胞の電気生理学的結合の検討を行っている。本年度の成果として、新たな細胞移植方法として、ヒアルロン酸を用いた3次元培養を行い、モルモット心筋梗塞モデルに移植した。細胞移植1週間後に心臓を摘出し、ヘマトキシリン/エオジン染色、β-myosin heavy chain抗体による免疫染色およびヒト特異的セントロメアに対するin situ hybridyzation法によって細胞の生着を組織学的に解析した。摘出心臓中の心外膜側に3次元構造を保った状態で、ヒト由来心筋細胞の生着を確認した。しかし生着効率は従来までの移植方法と比較しても、高くなく今後さらに条件の検討が必要である。また不整脈に関しては、in vivoにおける自発的および誘発不整脈の検討モデルを新たに確立し、今後細胞移植後4週間の経過で実際の検討を行う。さらに電気的結合の評価のための蛍光CaセンサーGCaMP3をZinc finger nucleaseを用いてヒトiPS細胞にAAVS1領域特異的に遺伝子導入することに成功した。今後細胞移植2週間または4週間後にin vivoのイメージングの解析により、ホスト心筋とグラフト心筋の電気的結合について評価する予定である。
2: おおむね順調に進展している
まず第一に、モルモットの心筋梗塞作製および、再開胸術について安定して施行可能となった。さらに、ヒトiPS細胞から、アクチビンA、BMP-4、マトリゲルを用いて、効率よく心筋細胞を作製するプロトコールを確立し、新たな細胞移植方法により、心筋梗塞部位への細胞の生着が確認できた。また、in vivoにおける不整脈解析のために、モルモットにおける自発的および誘発不整脈の解析システムを確立した。さらに、電気的結合を確認するための、蛍光CaセンサーGCaMP3を、Zinc finger nucleaseを用いてヒトiPS細胞にAAVS1領域特異的に遺伝子導入することに成功した。
新たな移植方法における条件の検討を引き続き行う。条件検討後も細胞の生着が不十分であれば、以前から当研究室で行っている、ヒートショックおよびpro-survival cocktailを用いた細胞移植方法に変更して細胞移植検討を継続する。また細胞移植後の不整脈の頻度について実際に検討を行う。さらに、GCaMP3陽性のiPS細胞由来心筋細胞を動物モデルに移植し、電気的結合についても検討する。
平成25年度は、細胞培養関連の消耗品として、培養用培地及び増殖因子を追加購入する。また動物実験関連費用として、実験動物の購入および薬剤の購入を行う予定である。前年度の動物実験のための使用動物数が予定よりも少なかったため、155,445円の予算が未使用となっているが、平成25年度の研究費と合わせて、実験動物を購入する予定である。
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