研究課題
内在性のマイクロRNA (miRNA;miR)とよばれる20塩基長程度のRNAが種々の疾患形成に関与する事が明らかになってきた。コレステロール代謝を制御する転写因子SREBP2のイントロンにmiR-33が種を超えて存在している。私達は、miR-33欠損マウスを作製し、SREBP2とmiR-33が協調的にコレステロール輸送蛋白であるABCA1の発現を制御し、細胞内コレステロールのレベルを調節する事を明らにした。このマウスは組織中のABCA1発現の上昇と、血中HDLコレステロールの上昇を認めた(Proc Natl Acad Sci U S A. 2010)。動脈硬化形成における役割を明らかにするためアポE欠損マウスとmiR-33欠損マウスを交配させた。アポE欠損マウスにおいてmiR-33を欠損させると機能的なHDLの上昇を示し、動脈硬化形成を抑制した。また、マクロファージにおいてABCA1/ABCG1の発現上昇を認め、コレステロール引き抜き能の改善を認めた(J Am Heart Assoc. 2012)。これらの結果から、miR-33制御が新たな動脈硬化治療法の開発につながりうることが示唆された。引き続き、miR-33抑制による効果の検討を開始し、現在解析を行っている。また、患者血清における血中のマイクロRNA測定を開始し、ヒト病態との関連につき検討を行っている。一方、コレステロールのみならず、miR-33は脂肪酸合成経路に影響を与える事が明らかとなった。予期せぬことにmiR-33欠損マウスは、脂肪肝を呈した。miR-33欠損マウスは肝臓において脂肪酸合成が亢進しており、その原因としてSREBP1の発現が亢進していることを見出した(Nat Commun. 2013)。これらの結果はこれまでに知られていないmiR-33を介した新たな脂質代謝制御機構が存在することを示し、これらの知見が新たな創薬の標的となりうると考えられる。
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