研究課題
ヒト多能性幹細胞由来の心筋細胞 (hESC/hiPSC-CMs) は、一般的に胎児性心筋細胞と類似し、成人の心機能とは異なる。本研究ではin vitroにおける機能的hES/iPSC-CMsの短期間での取得法の確立を目指す。浮遊培養は短期間で明確にhESC-CMsの心筋特異的遺伝子の発現誘導を引き起こすことから、接着培養条件下で化合物添加により浮遊培養を再現できれば、hESC-CMsの心機能の亢進・成熟へと繋がると考える。浮遊培養では、ヒストンのアセチル化レベルの増強が認められたことから、接着培養条件下でHDAC阻害剤で処理ところ、ヒストンのアセチル化レベルの増強および心筋特異的遺伝子の発現増強を誘導でき、浮遊培養を再現できた。細胞外電位(MEA)を用いた機能解析では、分化誘導間もない未成熟なhESC-CMコロニーは、hERGチャネル阻害剤であるE4031に対してQT延長や頻脈を示し、その応答性は同質でなかった。これらをHDAC阻害剤で処理すると、すべてのhESC-CMコロニーにおいてQT延長が認められた。いくつかのHDAC阻害剤を添加では、拍動数に対する応答性の違いが認められた。つまり、より効果的な化合物の同定により、エピジェネティックな制御が機能細胞の獲得に貢献することが示唆される。さらに、再生医療などへの実用化には、均質な細胞の大量供給が求められる。一般的に成体心筋細胞はその増殖能力を失っているため、大量の機能細胞の獲得に、多能性幹細胞の大量培養法の開発が不可欠である。しかし、多能性幹細胞の浮遊培養系では、撹拌による細胞ダメージのため、効率的な増殖生産はできなかった。今回、機能性高分子の使用で、細胞塊を三次元的に浮遊し、撹拌の不必要な三次元培養法の開発し、効率的な増殖生産を可能とした。これにより、実用化に必要な機能細胞の安定的な供給に大きく貢献することが期待できる。
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