①糖代謝:これまでに我々はSNCAが脂肪や骨格筋においてインスリンレセプターとは独立してGab1-PI3K-Akt-LPAR2経路を活性化してGLUT-4による糖の取り込みを促進することを見出した。更に高脂肪食負荷したSNCA KOがインスリン抵抗性を呈することをグルコースクランプ法にて確認し、脂肪細胞において飽和脂肪酸刺激によるPKC-θ及びNFkB活性化をリコンビナントSNCA(rSNCA)が抑制することから血中SNCAがインスリン抵抗性に対し保護的に機能している可能性が考えられた。また、SNCAの添加によりマクロファージにおけるAIM(apoptosis inhibitor of macrophage)の発現が減じることより、SNCAがマクロファージと脂肪のクロストークによる脂肪炎症も抑制している可能性が示唆された。SNCAの治療薬としての可能性を検討するために糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスに経静脈的にrSNCAを投与すると、呼吸商の上昇を認めると同時に、血糖の低下作用を認めた。 ② 血管内皮機能:これまでの検討で、rSNCAは血管内皮細胞においてGab1/PI3K/ Akt経路の活性化によりeNOSの活性化、NOの産生が促進することや内在性のSNCAは細胞老化に関連する可能性を見出した。また、SNCA KOより採取した大動脈のアセチルコリンによる弛緩反応はWTに比し減弱し、特に高脂肪食負荷したSNCA KOはWTに比し血圧が上昇することが確認できた。更に、L-NAME投与下ではそれらの差がなくなり、血管内皮でのSNCAの保護的な作用はeNOSの機能に依存している可能性が考えられた。 ③臨床研究:高齢者を対象としたコホート疫学研究であるSONIC研究の臨床検体を用いて、血中SNCA濃度をELISA法にて測定し、血管機能や代謝機能、更には癌や骨粗鬆症などの加齢性疾患との関連をフィールドワークを続行しながら検討中である。70歳の横断的な検討では、都市部に比し、農村部では血中SNCA濃度が有意に高くなっており、将来的には予後への関連性を明確にする。
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