研究課題
本研究では、心不全の病態解明、新たな薬剤標的探索を目標に、高速次世代シークエンサーを用いた分子スクリーニング系の確立を行った。我々は、代表的な活性化ヒストン修飾であるトリメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4me3)の集積が、心不全進行過程における遺伝子発現の新たなマーカーとなり得ると考えた。そこで、マウス圧負荷心不全モデルを用い、クロマチン免疫沈降法、高速次シークエンス解析により網羅的エピゲノム解析を施行し、同時にRNAシークエンス法による転写発現解析を行った。更に、Linuxサーバーを用いて、得られる膨大なシークエンス結果から、エピゲノムの定量的解析方法を確立し、遺伝子発現変化と組み合わせた2方向のプロファイリングを行った。コントロールマウス心臓組織を用いた予備解析の結果、従来単に“転写活性化の目印”とみなされていたH3K4me3修飾において、その集積の程度に差異があることが判明した。特に、転写因子やクロマチン修飾因子の発現量はRNAシークエンス解析上低値であるにも関わらず、その転写開始点には多くのH3K4me3修飾が集積していることが判明した。次に圧負荷心不全マウス心臓組織において転写レベルが上昇する遺伝子群に対し、さらにH3K4me3定量値の増加という2つ目のプロファイルによるフィルターをかけてスクリーニングを行ったところ、我々は心血管病態において過去の報告がない機能未知の転写因子を見出した。本因子のH3K4me3修飾は圧負荷が持続した慢性心不全心において顕著に誘導され、コピー数は少ないもののmRNA発現量も顕著に上昇していた。そこで、本因子が圧負荷心不全の進行に伴い誘導され、心不全の進展に関与しているとの仮説を立て、創薬シーズ候補遺伝子とし機能解析を継続中である。
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