研究概要 |
原発性肺高血圧症(PAH)では骨形成蛋白(BMP)2型受容体 (BMPRII)遺伝子変異が発見されているが、この変異がどのように肺高血圧症の発症・進展に寄与するかという機序は未だ不明確である。PPARγリガンドはPAHモデルラットにおいて、PAHの病態や血管リモデリングを改善することが知られており、その機序としてPDGFシグナルの阻害が想定されている。BMP-2がPDGFによるPAH血管平滑筋細胞増殖を抑制するとしたHansmann Gらの報告(2008 JCI)では, PPARγ欠損状態ではその効果は認めず, BMP-2シグナルの下流にPPARγが存在することが示唆されたが, 未だ確立した見解は得られていない。ついては肺高血圧症(PAHおよび二次性肺高血圧症(SPH))の肺動脈血管平滑筋細胞(PASMC)の増殖機序におけるBMPとPPARγの関連を明らかにすべく検討を開始した。 PAHおよびSPHの手術症例において、摘出肺組織から単離・培養したPASMCより核酸を抽出し、BMP・endothelin・aldosterone・PDGF刺激下でのPPARγ発現を評価したところ、PPH, SPHともにBMPでPPARγ発現は抑制され, PPHではPDGFにBMPを加えることでさらなる抑制を認めた。また、PPH PASMCにおいて、PPARγ・PPARαの刺激でBMP受容体(ALK2, BMPRII, ActRII)発現はやや抑制された。また、PAHのPASMC細胞増殖能をBrdU assayで評価したところ、PDGFやEndothelin、BMPによるPAH細胞の増殖促進作用はPPAR-γ添加により抑制される傾向を認めた。今後、PPARアゴニストの使用あるいは、PPARの活性化が、種々の増殖因子の下流で肺血管平滑筋細胞の増殖活性を制御しうる可能性が示唆され、研究を進めている。
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