研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症は, 肺動脈血管平滑筋の増殖により肺動脈の狭窄や閉塞をきたし, 肺血管抵抗の上昇から右心不全, 死に至る致死的疾患である. 治療の遅れは予後の悪化を招くため, 早期診断が重要である. 確定診断には右心カテーテルが必要であるが, 侵襲的手法でありスクリーニングには適していない. より早期から治療介入を行う事で予後が改善する事は既に報告されており, 非侵襲的で感度の高いスクリーニング法, 肺動脈圧上昇を表すバイオマーカーの必要性は高い. 本研究により, 我々は心肺運動負荷テストにおける呼気終末二酸化炭素分圧が平均肺動脈圧と強く相関し, 非侵襲的な早期診断に有用であることを突き止めた. 従来より推奨されている, 心エコー図における三尖弁圧較差を用いたスクリーニングと比較しても肺動脈圧との相関は高く, さらにそれぞれが独立した指標となり得る事も確認された. 本研究により, 三尖弁圧較差と呼気終末二酸化炭素分圧を併用することで, 早期に侵襲的な右心カテーテルまで行うべき症例をより的確に選択出来ると考えられた. また血清中のバイオマーカーとして, 可溶性RAGE (Receptor for Advanced Glycation End-product)が肺高血圧症で高値を示すことを見いだした. さらに, 可溶性RAGEは治療効果を反映することも確認された. 可溶性RAGEをこれまでの診断に追加することで, より早期の診断, さらに病勢および治療効果判定にも有用である可能性が示唆された.
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