研究課題/領域番号 |
24790761
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
植松 悦子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教務補佐員 (10352080)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
急性心筋炎は死亡率が約10%と言われており予後不良であるにもかかわらず、未だ確立された根本的治療法がない疾患である。一方で、グレリンとその受容体(GHS-R)はTリンパ球およびマクロファージに発現しており、グレリンはGHS-Rを介して炎症誘発性サイトカインの発現を抑制することが報告されている。本研究では、ラットの自己免疫性心筋炎モデルを用いて、グレリンの投与がT細胞の反応を調節し自己免疫性心筋炎の進展を抑制するという仮説を立て検証した。9週齢Lewisラットの後肢掌に精製ブタミオシンを皮下投与し自己免疫性心筋炎モデルを作製した。第4週目より、グレリン(100mg/kg皮下、1日2回)または溶媒のみ(対照群)の投与を3週間行った。心臓超音波検査にて経時的に左室リモデリング進展の評価を行い、6週間後に心臓カテーテルによる心内圧の測定を行い、直後に心臓摘出した。その後、遺伝子発現を中心とした生化学的評価を行った。心臓超音波検査では、グレリン投与群において左室径の拡大並びに左室内径短縮率の減少が有意に抑制されていた。また、グレリン投与により左室拡張末期圧の上昇が有意に抑制され、dP/dtは増加していた。さらに、グレリン投与の心筋では1型ヘルパーT細胞より分泌されるTh1サイトカインであるinterferon-γやinterleukin (IL)-2のmRNAの発現が減少し、2型ヘルパーT細胞からのTh2サイトカインであるIL-4とIL-10のmRNAの発現が増加していた。TNF-αおよびCollagenIIIのmRNA発現も抑制された。これらの結果より、グレリン投与はTh1/Th2バランス修飾などにより自己免疫性心筋炎の進展を抑制したといえる。なお、グレリンの心筋炎後のリモデリング抑制のメカニズムをさらに解明するため、本テーマについて平成25年度も引き続き研究を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットの自己免疫性心筋炎モデルを用いて、グレリンの投与がT細胞の反応を調節し自己免疫性心筋炎の進展を抑制するという仮説を立て検証したところ、心臓超音波検査では、グレリン投与群において左室径の拡大並びに左室内径短縮率の減少が有意に抑制されていた。また、グレリン投与により左室拡張末期圧の上昇が有意に抑制され、dP/dtは増加していた。さらに、グレリン投与の心筋では1型ヘルパーT細胞より分泌されるTh1サイトカインであるinterferon-γやinterleukin (IL)-2のmRNAの発現が減少し、2型ヘルパーT細胞からのTh2サイトカインであるIL-4とIL-10のmRNAの発現が増加していた。TNF-αおよびCollagenIIIのmRNA発現も抑制された。これらの結果より、グレリン投与はTh1/Th2バランス修飾などにより自己免疫性心筋炎の進展を抑制したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ラット自己免疫性心筋炎モデルを用いたグレリン投与による抗リモデリング効果とそのメカニズム解明を引き続き行う。現在進行中の検討に加えて、心臓並びに浸潤細胞(特にリンパ球、マクロファージ)でのグレリン並びにその受容体(GHS-R)の発現を免疫細胞染色等により調べる。そして、同モデルでのグレリン投与の効果について組織学的に検証する。すなわち、Hematoxylin-eosin染色により炎症の程度をスコア化し、Sirius Red染色により形態学的コラーゲン密度を定量する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットの購入・飼育費、自己免疫をおこすための精製ブタミオシン・adjubant等の費用、グレリンおよびその受容体(GHS-R)の発現をみるための生化学的試薬、心臓超音波検査・心内圧測定時の備品、グレリン投与後の心筋での遺伝子発現をみるための定量PCR用試薬・組織学的試薬、投与実験用のグレリン購入費用、等に研究費を使用する予定である。
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