研究課題/領域番号 |
24790764
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阿部 弘太郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20588107)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 肺循環 / 再生医学 / 病理学 |
研究概要 |
骨髄に由来する血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell; EPC)は、ヒト肺動脈性肺高血圧症(PAH)の血中および新生内膜や叢状病変(plexiform lesion)といった増殖性病変に認められるが、増殖性病変の進展における役割は不明である。本研究では、申請者が開発したこれらのヒトPAHに認められる増殖病変を再現する新しいモデル動物を用いて、骨髄由来のEPCがどのように増殖性病変に動員、定着・分化されるかを明らかにする。また、肺高血圧症の新しい治療薬として注目されているチロシンキナーゼ阻害薬のEPCの動態制御を介した病変抑制効果と肺高血圧治療効果についても経時的に明らかにする。 初年度である平成24年度はまず、肺高血圧症モデル動物(SHNモデル)の作成から開始した。このモデルを用いて、肺高血圧と増殖性病変の進展における骨髄由来細胞の発現について解析した。肺高血圧モデルとしてSHNモデル:VEGF受容体拮抗薬Sugen 5416皮下注に低酸素負荷を3週間行い、その後常酸素負荷を10週間行い肺高血圧モデルラットのひとつとして作成した。このモデルでカテーテルや心エコーによる血行動態(肺動脈圧、心拍出量、血圧)を測定した。肺高血圧症の進展に伴って、病理学的には中膜肥厚(3週)、新生内膜(5-8週)、plexiform lesion(13週)の進行を認めた。骨髄由来細胞のマーカーとしては、1-3週の増殖性血管病変の外膜側を中心に、c-kit陽性細胞を認めた。したがって、増殖性病変の形成早期にEPC関連マーカー陽性細胞の浸潤があることが明らかとなった。 SHNモデルを用いた肺高血圧症の研究成果は昨年度の日本循環器学会学術集会で採択され、発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、モデル動物作成、血行動態の評価、および免疫染色を用いてEPC関連マーカーの同定を遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は予定通り、SHNモデルの増殖性病変における骨髄由来細胞の増殖性病変進展における役割について検討する。また、チロシンキナーゼ阻害薬のEPC抑制効果についても検討し、骨髄由来細胞の動員・生着・分化の抑制による肺高血圧症治療効について検討する。 次の研究計画では、モデルで認められたEPC関連マーカー陽性細胞が、骨髄由来の細胞であることを確認する目的で、GFP標識ラット(日本エスエルシー株式会社)の骨髄を放射線照射した野生型ラットに移植する。この移植されたラットに対して、肺高血圧症モデルの作製を開始する。検討する項目は、新生内膜とploexiform lesionといった増殖性病変におけるGFP標識された細胞の割合を計測する。この検討から、増殖性病変における骨髄由来の細胞の割合が明らかにする。 次に、新生内膜が出現する5週目から、肺高血圧症ラットに対しチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ)の連日内服投与を開始する。イマチニブを投与した肺高血圧症ラットにおいて、EPC関連マーカーの染色や血中EPC関連マーカーの測定、遺伝子解析を行う。また、GFP標識した骨髄を移植されたラットにイマチニブを投与すれば、イマチニブの骨髄由来の細胞の動員・生着・分化の抑制による、肺高血圧症治療効果が明らかになる。以上の結果が出た段階で、論文化を目指す。 現時点で研究計画遂行における問題点は特にない。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度である平成24年度は、モデル動物の作製と免疫染色を中心に行い、おおむね予定通りの使用だったが、平成25年度にFACS関連物品やGFP標識ラットの購入、またチロシンキナーゼ阻害薬等の購入の必要性が出てきたため、研究費を繰り越し、次年度は残りの研究費を計画通りすべて使用する予定である。
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