研究課題
骨髄に由来する血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell; EPC)は、ヒト肺動脈性肺高血圧症(PAH)の血中および新生内膜や叢状病変(plexiform lesion)といった増殖性病変に認められるが、増殖性病変の進展における役割は不明である。本研究では、申請者が開発したこれらのヒトPAHに認められる増殖病変を再現する新しいモデル動物を用いて、骨髄由来のEPCがどのように増殖性病変に動員、定着・分化されるかを明らかにする。初年度に引き続き、平成25年度も肺高血圧症モデル動物(SHNモデル)の作成を行い、肺高血圧と増殖性病変の進展における骨髄由来細胞の発現について解析した。肺高血圧モデル(SHNモデル)は、VEGF受容体拮抗薬Sugen 5416皮下注に低酸素負荷を3週間行い、その後常酸素負荷を10週間行うことで作成される。このモデルでカテーテルや心エコーによる血行動態(肺動脈圧、心拍出量、血圧)を測定した。肺高血圧症の進展に伴って、病理学的には中膜肥厚(3週)、新生内膜(5-8週)、plexiform lesion(13週)の進行度について解析を行った。病変の進行に伴い閉塞性増殖性病変の周囲、特に新生内膜病変の周囲にはTリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤を認めた。一方、3-5週と比較的初期の段階で増殖性血管病変の外膜側を中心に、骨髄由来細胞のマーカーc-kit陽性細胞を認め、13週などの末期には認めなかった。この結果から、増殖性病変の形成早期にEPC関連マーカー陽性細胞の浸潤があることが明らかとなった。これまで、ヒト肺高血圧症病態末期に骨髄由来細胞が増殖性病変周囲に浸潤しているという報告はあるが、本研究により比較的早期に骨髄由来細胞の動員があることが明らかなとなった。SHNモデルを用いた肺高血圧症の研究成果は日本循環器学会学術集会や米国胸部疾患学会総会など主たる国内・国際学会にて発表した。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 3件)
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