研究課題
本研究では、まず臨床研究において心血管疾患におけるマイクロRNA発現を検討した。対象として、心血管疾患発症リスクの高い睡眠時無呼吸症候群の患者を選択し、血漿中で発現するマイクロRNAの同定、持続陽圧呼吸装置(Continuous Positive Pressure: CPAP)治療後のマイクロRNA発現変化を検討した。当院へ入院し、ポリソムノグラフィーでAHI(apnea hypoxia index)30以上であり、睡眠中のCPAP治療に賛同された患者を登録した。心血管疾患の合併症なく、治療の前後で測定出来た症例は11例(男性10例、女性1例)。平均年齢 58.3歳。CPAP治療により、AHIは59.4から6.5まで有意に改善した。また血圧及び血管内皮機能(FMDにて測定)も改善傾向を認めた。以上の患者において血漿からマイクロRNAを抽出した。まず、4人分からマイクロRNAアレイを施行し、変化の大きいものを選択し、さらに11人の検体を用いてq-PCRを施行したが、今回の症例群では治療の前後で有意差を認めたマイクロRNAを同定出来なかった。マイクロRNA-132(miR-132)の心血管疾患への治療応用を検討した。培養血管内皮細胞を用い1%酸素で培養し、細胞内でのマイクロRNA発現量を検討した。miR-132は0.74倍に有意に低下し、miR-210の発現は2.20倍に増加した。miR-132のターゲットの1つであるp120RasGAPは細胞増殖を促すRasを不活化するGTPaseの補酵素であるため、miR-132投与による細胞増殖及び血管新生効果を予測して、マウス下肢虚血モデルに投与した。虚血領域に筋注したが、p120RasGAPの発現に変化なく、レーザードップラーで測定した虚血の改善も明らかなものは見られなかった。直接筋注ではマイクロRNAが拡散し、効果が少ないと思われたため、以前の実験で蛋白の局所投与に有効であったナノファーバージェルを用いて混注したが、同様の結果であった。今後miRNAデリバリーの工夫が重要であり、有効な方法を再検討する。
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