研究課題/領域番号 |
24790767
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古賀 聖士 長崎大学, 大学病院, 助教 (00398158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不安定プラーク |
研究概要 |
急性冠症候群の主な発症機序は、冠動脈不安定プラークの破綻と血栓形成と考えられているが、それを非侵襲的に予測可能な検査方法は未だ確立されていない。本研究の目的は、不安定プラークの代表的な形態であるthin-cap fibroatheroma (TCFA)を予測可能なバイオマーカーを確立することである。 まず新しい炎症マーカーであるpentraxin 3 (PTX3)の有用性について検討した。75例の冠動脈疾患患者(安定狭心症47例、急性冠症候群28例)を対象に、末梢静脈血から測定した血漿PTX3値と、光干渉断層像(OCT)を用いて同定したTCFAの関連を解析した。 75例のうち、TCFAを有する患者(TCFA群)を38例、有さない患者(非TCFA群)を37例認めた。TCFA群は、非TCFA群よりも血漿PTX3値は有意に高値を示した(p < 0.001)。血漿PTX3値は、TCFAの線維性被膜厚と逆相関を認めた(r = -0.71, p = 0.001)。多変量ロジスティック回帰分析の結果、血漿PTX3値はTCFAの最も強い予測因子であった(オッズ比: 3.26, 95%信頼区間: 1.75 - 6.05, p < 0.001)。ROC解析の結果、血漿PTX3値によるTCFAの予測能は、3.24 ng/ml以上をカットオフ値とすると、感度84%、特異度86%であった。 以上から、血漿PTX3は不安定プラークの予測に有用である可能性が示された。血漿PTX3を測定することで、急性冠症候群を発症しうるハイリスク患者を同定可能となり、その様な患者には早期に治療介入することで、急性冠症候群の発症予防につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現段階で、血漿PTX3値が不安定プラークの存在を予測できる可能性があることが明らかとなった。一方、血漿PTX3値は、頚動脈、大動脈、下肢動脈などの全身の動脈硬化も反映して上昇している可能性がある。よって、測定した血漿PTX3値が、局所の冠動脈プラークを反映したものなのかは未だ明らかにできていない。 そこで、今後の課題としては、末梢静脈血だけでなく、大動脈血、冠静脈血、冠動脈血、大腿静脈血などの血漿PTX3値も検討し、血漿PTX3値の上昇が、冠動脈プラーク由来かどうかを明らかにする必要がある。 また、バイオマーカーとしてPTX3のみしか検討できておらず、その他の炎症、酸化ストレスマーカーとの優位性の比較はできておらず、今後の検討課題である。 以上のように、今後解明すべき点も多くあり、現在までの達成度を「(3)やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)第一に、血漿PTX3値の上昇が全身の血管の不安定プラークではなく、冠動脈不安定プラークに由来することを証明する。そのために、冠静脈血―大動脈血間、あるいは冠動脈血の血漿PTX3値とTCFAの関連を検討し、さらに頸動脈エコーや血管内皮機能検査による全身動脈硬化の評価と、PTX3値およびTCFAの関連を検討する。 (2)第二に、その他の炎症、酸化ストレスマーカー(酸化LDL、可溶型CD40リガンド、myeloperoxidase、lipoprotein-associated phospholipase A2、solble lectin-like oxidized LDL receptor 1、HMGB1など)においても同様の解析を行い、その結果をPTX3と比較することで、不安定プラークの予測における血漿PTX3の優位性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主な物品費として、冠静脈洞や冠動脈内から血液を採取するための専用のカテーテルをはじめ、保険診療の範囲外のカテーテル類は、研究費からの購入が必要である。 旅費としては、最新情報の収集や、研究成果の発表のために、国内あるいは国際学会への参加を予定している。 その他の費用として、PTX3をはじめとした各種のバイオマーカーの測定は、保険診療の範囲外であり、外部業者への委託が必要であり、研究費から測定費用を準備する必要がある。
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