研究課題/領域番号 |
24790767
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古賀 聖士 長崎大学, 大学病院, 助教 (00398158)
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キーワード | 不安定プラーク / 急性冠症候群 / 光干渉断層法 |
研究概要 |
急性冠症候群は、主に冠動脈不安定プラークの破綻と血栓形成が原因で発症する。急性冠症候群の予測と予防には、この不安定プラークを早期かつ簡便に発見できる検査方法の確立が極めて重要である。今回われわれは、pentraxin 3 (PTX3)という新しい急性炎症タンパクに着目した。PTX3は動脈硬化巣局所の細胞から産生されるため、従来からの炎症タンパクであるC-reactive protein (CRP) よりも局所の炎症を反映すると考えられている。そこで、本研究の目的は、末梢血PTX3が不安定プラークの存在を予測可能な有用なバイオマーカーになり得るかを明らかにすることである。 対象は75人の冠動脈疾患患者(安定狭心症47人、急性冠症候群28人)。冠動脈責任病変に対して経皮的冠動脈インターベンションを行う際に、光干渉断層法 (OCT) によって冠動脈病変の性状評価を行い、不安定プラークの代表的な特徴であるthin-cap fibroatheroma (TCFA) の有無を決定し、TCFA群 (n = 38) と非TCFA群 (n = 37) に分類した。末梢血から高感度CRPとPTX3を測定し、プラークの性状との関連を検討した。 結果、非TCFA群と比較して、TCFA群においてPTX3値は有意に高値を示したが、高感度CRP値に有意差はなかった。PTX3値はプラークの不安定性の指標である線維性被膜厚と有意な逆相関を示したが、高感度CRP値は有意な相関を示さなかった。多変量解析の結果、TCFAの存在を予測する最も強い因子はPTX3値であった。PTX3のTCFA予測能はAUC = 0.89であり、カットオフ値 >3.24 ng/mLの感度、特異度は84%、86%であった。 以上から、末梢血PTX3値は、冠動脈不安定プラークを予測可能な有用なバイオマーカーになり得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階で、血漿PTX3値が不安定プラークの存在を予測できるバイオマーカーになりうることが明らかとなり、当初の目標の第一段階は達成できたと思われる。 しかし、他のバイオマーカー候補との比較がまだできていない。具体的には、その他の炎症、酸化ストレスマーカーと比較して、PTX3の予測能がより勝っているかどうかの比較検討ができておらず、今後の検討課題である。 以上のように、今後解明すべき点もまだ残っており、現在までの達成度を「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)その他の炎症、酸化ストレスマーカー(酸化LDL、可溶型CD40リガンド、myeloperoxidase、lipoprotein-associated phospholipase A2、solble lectin-like oxidized LDL receptor 1、HMGB1など)についても同様の手法で解析を行い、それぞれの不安定プラークに対する診断能を解析し、それををPTX3の診断能と比較することで、不安定プラークの予測における血漿PTX3の優位性を確立する。 (2)最終結果の学会発表と論文作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
患者登録が予定よりも進まなかったため、保存血清からの各種バイオマーカーの測定費用が予定よりも少なかっため。 各種バイオマーカーの測定費用や、論文執筆に伴う執筆費用に使用する予定である。
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