研究概要 |
1. 培養線維芽細胞での検討:野生型マウスおよびSirt7ノックアウトマウス由来の線維芽細胞を用いて遺伝子発現,細胞内シグナルを解析した. Sirt7ノックアウトマウス由来の線維芽細胞ではTGF-β受容体タンパクが有意に減少しそれに伴いsmad2/3の活性化も有意に減少した.心筋梗塞境界領域のTGF-β受容体タンパクはSirt7ノックアウトマウスで有意に減少した. TGF-β受容体タンパクの分解には細胞膜上の局在が重要であることが報告されている.そこで超遠心法を用いてTGF-β受容体の細胞膜上の局在を検討したところ,Lipid raft分画に位置するTGF-β受容体の量が,Sirt7ノックアウトマウス由来の線維芽細胞で有意に増加していることが確認された.この局在変化がTGF-β受容体タンパク量の変化に寄与した可能性が示唆された. 2. 内皮細胞での検討:培養内皮細胞においてsiRNAを用いてSirt7をノックダウンしたところ,内皮細胞の管腔形成能,増殖能,遊走能が有意に抑制されることが明らかとなった.また,アデノウイルスを用いたSirt7過剰発現実験では,管腔形成能,遊走能が有意に促進することが明らかとなった.また,炎症細胞浸潤に重要な接着因子の発現をPCRにて評価したところ,Sirt7のノックダウンによりVCAM-1の発現が有意に低下することを明らかにした.TGF-βシグナルは内皮細胞においても細胞増殖や細胞遊走を促進することが知られているため,線維芽細胞で認められたTGF-β受容体タンパクの分解が内皮細胞の機能維持に寄与している可能性が示唆された.
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