研究課題
本研究は、冠動脈硬化の基盤としての冠攣縮の冠動脈プラーク形成に与える影響を評価するものである。具体的には胸痛精査目的に当科に入院し、血管造影上の有意な冠動脈器質的狭窄を有さない患者においてアセチルコリン冠攣縮誘発試験(ACh負荷試験)を施行し、①陽性患者(冠攣縮性狭心症患者)と②陰性患者(胸痛症候群患者)に割り付け、血管内超音波(IVUS)を施行し、冠動脈プラーク組織性状評価法を施行し、その組織性状を比較した。さらに対象患者の血管内皮機能検査を行い、また血液サンプルを用いて、酸化ストレスマーカーや炎症マーカーを評価する。また上記対象患者の予後を追跡し、フォローアップのIVUSを施行しえた患者におけるサブ解析において、冠攣縮性狭心症患者が有する冠動脈プラークの進展・退縮、プラーク性状の安定化・不安定化を評価する方針である。平成24年度の実績としては、1.対象患者のエントリーを行い、計42名[男性19名、 女性23名、平均61±13歳]の登録を得た。2.IVUSおよび冠動脈プラーク組織性状評価法の施行した。上記対象患者を①陽性患者(冠攣縮性狭心症患者、VSA Group、26名)と②陰性患者(胸痛症候群患者、Non-VSA Group、16名)に割り付け、IVUSを記録した。その際のRF信号の解析から冠動脈プラーク組織性状評価法を施行し、その冠動脈プラーク組織性状をVSA GroupとNon-VSA Groupで比較したところ、VSA groupで線維性プラークの増生を認めた。各群における性差も検討したが、明らかな性差は認めなかった。3.当大学に設置されたIVUSコアラボにおいて、前述2のIVUS画像の定量的3次元解析を行ったところ、VSA groupで、有意なびまん性のプラーク体積の増加を認めた。上記内容を国際学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
上記実績の概要の通り、患者登録を得ることができ、計画通りのACh負荷試験の遂行。IVUS画像記録、組織性状評価を行うことができた。また、上記結果を得ることができ、アメリカ心臓病協会などの国際学会で成果を発表することができた。
平成25年度以降の本研究の推進方策としては、1.予後調査:上記平成24年度の計画において、本研究に登録された対象患者の心血管イベントを含めた予後調査を施行。具体的には、外来主治医もしくは紹介元へのアンケートおよび患者への電話連絡にて主要心血管有害事象(①心臓死、②非致死性Q波あるいは非Q波心筋梗塞、③経皮的冠動脈形成術あるいはCABGの施行)の有無を確認し、これらの心血管イベント発生と冠動脈プラーク組織性状および冠動脈プラーク容積などの3次元解析データとの相関を検討する。2.フォローアップ患者におけるIVUS・冠動脈プラーク組織性状評価法・3次元解析の施行:冠動脈インターベンション後の確認造影検査などでフォローアップの心臓カテーテル検査が施行しえた症例において、IVUS記録および冠動脈プラーク組織性状評価法を再施行する方針。冠攣縮性狭心症患者の冠動脈プラーク進展(動脈硬化進展)に与える冠動脈プラーク組織性状の影響が明らかとなることが期待される。3.血管内皮機能検査・酸化ストレスマーカー測定のフォローアップ:前述の内皮機能検査Endo-PATやThioredoxinや8-OHdGなど酸化ストレスマーカーをフォローアップ患者において測定し、至適薬物治療前後におけるこれらのパラメーターの推移を評価し、冠動脈プラーク組織性状および冠動脈プラーク進展・退縮の変化に与える影響を評価する方針。
近年、IVUSと同様の血管内イメージングモダリティーとして、光干渉断層法(OCT)が開発され、その高い解像度を背景に冠動脈プラークの組織性状評価にも用いられている。本画像診断法を併用するため、OCTイメージングカテーテルの購入を検討している。
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