研究課題
我々は以前より食塩感受性高血圧のモデル動物であるダール食塩感受性ラット(DSラット)を用いて食塩感受性高血圧の病態機構や合併する慢性腎臓病(CKD)や心拡張不全の発症機序を基礎的に検討してきた。CKDや心拡張不全は本邦に多い食塩感受性高血圧に合併しやすく予後不良なことから、その治療方の確立が待望されている。本研究は、酸化ストレス(ROS)の新たな産生源として注目されている“一酸化窒素合成酵素(eNOS)アンカップリング”現象という内皮細胞に局在するeNOSの機能異常の、CKDや心拡張不全への関与機序や病態における役割について検討するものである。我々の以前の基礎研究では、eNOS補酵素であるBH4欠乏がeNOSアンカップリングを惹起し血管内皮機能異常に関与する新たな分子機序を明らかにしたが、本研究ではさらに検討をすすめ実際の病態における関与メカニズムの検討をした。本研究では、DSラットの血中・尿中・腎組織でのBH4が低下しており、eNOSアンカップリングによるROSの増加が確認された。さらにeNOSアンカップリングを改善させるため補酵素BH4を直接投与したところ、DSラットのCKDが有意に改善することを生化学的・病理学的に明らかにした。さらに我々は、実際の拡張不全心不全患者において血管内皮機能障害が有意に起こっていること、末梢の血管内皮機能を非侵襲的に測定するRH-PAT法による内皮機能障害の程度が有意に心血管ベントの発症と相関することを明らかにした。さらに、これらの患者でeNOSアンカップリングの指標である血中BH4濃度も有意に相対的低下をしめしており、心拡張不全患者において、血中BH4測定が有用である可能性が示唆された。これにより、いまだ病態の詳細や治療法も明確になっていない心拡張不全やCKDに対する新たな診断および治療法の確立に大きく寄与できると考えている。
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