症例登録の困難から、対象疾患を急性心不全まで広げて解析した。その結果、下記のような知見を得、Simultaneous Fat and Bone Assessment in Heart Failure Patients Using Non-contrast-enhanced Computed Tomographyという演題で日本循環器学会で発表した。すなわち、心臓CTで計測した心嚢周囲脂肪体積が心房細動、高血圧、高齢などの心不全のパラメーターと独立して相関することを明らかにし、これは心嚢周囲脂肪のこのような病態への関与を示唆するデータであると考えられた。また心臓CTで同時に計測した胸椎のCT値が年齢とのみ独立した逆相関を示すことを明らかにし、これは上記結果と合わせて加齢が心不全患者の脂肪、骨代謝に関与する重要な要素であることを示唆するデータであると考えられた。さらに、患者からの血液検体で各種炎症マーカー、石灰化関連マーカーを測定することができたので、病態との関与を考察に加えた論文を執筆中である。この研究の次のステップは、心臓CTで計測した心嚢周囲脂肪体積や骨のCT値が疾患の予後予測、治療効果判定に有用かどうかを明らかにすることである。心不全患者の予後は依然悪く、ここ数年も有効な治療法が明らかになっていない。急性冠症候群患者においても、本研究の対象患者のように心不全を合併するような重症例では、心臓CTで心嚢周囲脂肪や骨の評価を行うことが新たな治療法開発の手掛かりとなる可能性が示唆されたといえる。
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