現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PYK2欠損マウスを用いた解析により、PYK2・増殖チロシンキナーゼ複合体が、低酸素暴露下において収縮型の肺動脈平滑筋細胞を増殖型に形質転換させるメカニズムを明らかにした。すなわち1)低酸素による平滑筋細胞の収縮反応の持続は細胞内ATPレベルを低下させ 2)そのATPレベルの低下刺激でPYK2は活性化し細胞膜に移行、増殖チロシンキナーゼ複合体を活性化、3)一方、PYK2は一部核に移行p53を分解し、細胞増殖を促進する事、4)またPYK2はPGC-1αを介しミトコンドリア生合成を促進し、増殖に必要なATPレベルを維持する事を証明しえた。 すなわちPYK2欠損マウスでは野生型と比較し低酸素暴露において増殖期に入るBrdU、Ki67染色陽性中膜平滑筋細胞数が減少した。そのメカニズムはキナーゼ下流増殖シグナルであるMAPKs, PI-3-K/Akt系の活性定価,細胞増殖因子Cyclin D発現量の低下、増殖抑制蛋白であるp53/p21,p27レベルの低下、さらに増殖シグナルの増幅に関わるROS定量評価(DHE,8-OHdG, Nitrotyrosine染色)の産生低下が見られた。また、低酸素刺激による細胞内ATPレベルの低下が抑制された。活性化されたPYK2が細胞膜に移行し細胞膜に存在するFAKと複合体を形成し、さらに、Src/JAK/Abl増殖キナーゼ分子複合体を形成・それらが相互に活性化された。さらにATPレベルの低下がPYK2更には、Abl, Src, JAK, FAKを活性化させた。以上の結果は、ストレス応答性チロシンキナーゼPYK2がSrcファミリーキナーゼと強調して低酸素における細胞内エネルギーレベルの変化に応答し、細胞増殖・生存を調整していることを表していると考えられた。
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