研究課題
脂質異常、高血圧や肥満といった生活習慣病の基盤病態として慢性炎症反応が注目されている。しかし、これらの疾患ではどのようにしてその無菌的な炎症反応が惹起されるのかは不明である。そこで我々はインフラマソームと呼ばれる自然免疫経路に注目した。インフラマソームは細胞内の分子複合体でありCaspase-1を活性化する事で、IL-1βを成熟化させ炎症惹起を制御している。なかでもNLRP3インフラマソームは動脈硬化や痛風といった疾患における無菌性炎症の惹起に関与することが報告されている。そこでNLRP3インフラマソームが大動脈瘤の炎症に関与すると仮説を立て、その役割について検討した。ApoEノックアウトマウス(ApoE-KO)およびApoEとNLRP3インフラマソーム構成分子(NLRP3、ASC、Caspase-1)のいずれかと二重欠損したマウス(DKO)にアンジオテンシンII(AngII)を4週間持続投与し腹部大動脈瘤を誘導した。その結果ApoE-KO群に比べDKO群では大動脈瘤の形成率が有意に減少することが明らかとなった。また、病変部の外膜ではマクロファージが浸潤しCaspase-1が活性化していることが明らかとなった。さらに詳細な解析を行なったところ、AngIIによりマクロファージの酸化ストレスが亢進し、インフラマソームが活性化する事が明らかとなった。以上より大動脈瘤の発症・進展においてマクロファージのインフラマソームが重要な役割を持つ事が明らかとなった。今後さらに詳細なメカニズムを解明する事でインフラマソームが大動脈瘤の治療標的になり得ることが期待される。
3: やや遅れている
動脈硬化モデルに関しては動物モデルによりインフラマソームの構成分子の欠損で動脈硬化の形成が有意に抑制され、マクロファージの浸潤が抑制されることを見いだした。また動脈硬化の形成で重要な血管の石灰化に関与するリン酸カルシウム結晶がインフラマソームを活性化することを見いだした。以上の内容は既に論文報告を行なっておりプロジェクトとしては終えている。一方大動脈瘤モデルに関しても、動物モデルや細胞レベルの検討でインフラマソームが大動脈瘤形成で重要な役割を持つことを見いだしているが、論文投稿した結果、追加実験を求められており現在遂行中である。
追加実験で求められている、インフラマソーム構成分子欠損マウスの生食投与群の追加、骨髄移植モデルの追加、免疫組織化学染色の追加を現在遂行中である。これらを行なった後、すみやかに論文を修正し再投稿を行なう。
現在投稿中の論文で追加実験を求められており、その実験で使用する物品費として次年度使用額が生じている。モデル作成に必要なマウスの飼養コスト(エサ代、管理料)、動物モデル作成に必要な浸透圧ポンプ、解析実験に必要な抗体、ELISA kit、Real time PCR用の試薬等に使用する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The American journal of pathology
巻: 184 ページ: 1287-1298
10.1016/j.ajpath