研究課題/領域番号 |
24790780
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田村 雄一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00468498)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 交感神経 / 心臓移植 |
研究概要 |
本研究は心臓移植モデルマウスを用いて、内因性心臓交感神経刺激細胞が増殖・分化して交感神経作用を補完することが生理学的意義を持つことを解明することを目的とした。具体的な手法としては心臓における交感神経活性を評価する画像検査を行うと共に、心電図・心エコー及びランゲンドルフ還流心モデルを用いて内因性心臓交感神経刺激細胞が生理学的にも有効な作用を持つことを示す。 平成24年度には心臓移植モデルマウスを作製し、移植後1~4週の時点での移植心における交感神経活性を観察した。先行研究で移植心では除神経後に内因性心臓交感神経刺激細胞が増加していることを組織学的に明らかであったため、本研究においては移植心内で増加している細胞が生理的な交感神経活性を保持していることを以下の方法でより詳細に検討した。 1)移植心臓内におけるカテコールアミンの生合成を生化学的(クロマトグラフィー法を用いる)およびRNA発現レベルで解析したところ、移植後の心臓では経時的にカテコールアミンの生合成が増加していることが、合成酵素のRNA発現レベルおよびカテコールアミンの組織中の濃度の検討から明らかになった。 2)MIBGラジオアイソトープ検査を行い、移植心臓内でノルエピネフリンの代謝が行われていることも確認された。このことから、移植後に次第に交感神経活性・再取り込み能が再賦活化されていることが示唆された。 3)交感神経刺激性の薬剤投与下での心エコーや心電図およびランゲンドルフ還流心モデルによる解析を行い内因性心臓交感神経刺激細胞が移植心において生理学的作用を果たしていることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では平成24年度には内因性交感神経刺激細胞が移植心において交感神経作用を補完することが生理学的意義を持つことを解明することを目標としていた。 実績概要に示したとおり、多角的な手法により内因性心臓交感神経刺激細胞が生理学的にも有効な作用を持つことを示すことができたため、予定通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究内容を臨床応用に結びつけるため、平成25年度は以下の内容を計画している ・内因性心臓交感神経刺激細胞の増殖・分化誘導因子の解析 本研究では内因性心臓交感神経刺激細胞の生理学的活性を解析すると同時に、増殖・分化を促進する因子に関する検討も行う。すでにin vitroの系で心臓内の神経堤由来細胞を分離した上で培養すると、内因性心臓交感神経刺激細胞に分化することは実証している。そこでさらに本研究では神経堤由来細胞からの分化・増殖をより効率的に促す物質の同定を行う。我々はその有力な候補として神経増殖因子(Nerve Growth Factor: NGF)に着目しており、内因性心臓交感神経刺激細胞がNGFの修飾を受けると有意に増殖・分化することをin vitro/ in vivoの双方で示すことを計画している。すでに移植心ではNGFの活性が増加していることは確認しているため、in vitroにおいては添加することで内因性心臓交感神経刺激細胞への分化が高率に促進される因子を同定するとともに、移植モデルマウスにおいてもNGFの投与により移植心内において内因性心臓交感神経刺激細胞が増加することを確認する。これにより内因性心臓交感神経刺激細胞がどのような刺激を受け、どのようなメカニズムで交感神経系を補完するように働き始めるかが明らかとなるため、ヒトの移植心に対する治療としての臨床応用の重要な端緒となることが期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究で用いるトランスジェニックマウスの作成・使用および解析のための試薬などの消耗品での使用を計画している。 また成果報告のため学会発表・論文投稿を予定している。
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